| 航は、一人夜の街をさまよっていた。 どうしていままで遥にこんなにまで執着していたのか。
 遥に気持ちを告げる前に、響を牽制した理由。
 考えれば考えるほど、わけがわからなくなった。
 「お兄さん、一人ぃ〜?」
 甘ったるい声で女が航に声を掛けてきた。
 「なあ、突っ込まれると気持ちいいのか?」
 「なあに?」
 「セックス!気持ちいいのかって聞いてんの!」
 「気持ちいいに決まってるじゃない!ばーか」
 「じゃあ、ケツは?気持ちいいのか?」
 「ちょっと、なんなのよあんた!気持ち悪いな」
 女は手をふりほどいて行ってしまった。
 答えは見つからない。
 「航?」
 名を呼ばれ振り返ると、響がいた。
 「病院休んでなにしてるんだ?」
 「お前のせいだ!」
 「なにが?」
 「なんであんなことしたんだ?」
 「…抱いたこと?」
 「そうだよ!」
 「忘れられただろ?遥のこと。頭の中は僕のことで一杯だろ?悪いな。もう手段を選んでいられないんだ。」
 「責任…責任取れよ!」
 「…昔、僕にしたことを考えたらそんなこと言えないよな?それよりどんな責任をとって欲しいんだ?」
 航は考えた。
 どうして響に振り回されるのか…
 「響…もう一回だけ、抱いてくれ」
 
 
 今度ははっきりと自覚して抱き合った。
 響の腕に抱かれたのだ。
 そして、気付いた。
 なぜ遥との仲を裂こうとしたのか。
 完全に嫉妬だ。
 航は間違っていたのだ。
 航が欲しかったのは響の腕だった。
 「これで、遥からも僕からも解き放たれただろ?」
 響は身支度を整えながら言った。
 「帰るよ」
 「待て」
 「なんだよ?」
 「いや、なんでもない」
 響は少しだけ後悔していた。意外にも航が純情だったことに対して。
 
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