第九十三話  決意
「大阪に?」
「うん。昨日から行ってる。」
「じゃあ暫くは響と二人きりだ。」
「うん」
 響の唇が遥のそれに重なった。


「あっ…んんっ」
 遥に響が圧し掛かって挿入し、抽挿を開始したときだった。
 携帯電話が鳴った。
「はぁん…やだっ、抜かないでぇ」
 遥は甘ったるい声で響に懇願した。
 暫く鳴り続けた電話は、留守電に切り替わった。


「隣?」
「ああ。」
「あそこは湊に売る予定だ」
「その反対側」
「そこは庭に…」
「そこを売ってくれ。」
「やだ」
「遥の職場を作る」
「…絶対に言うと思った」


 航は祖母を説得して東京で開業させる決意を固めたのだ。
「…祖母との約束は…跡継ぎを作ることだ。だからそばにいさせて欲しい。」
「え?」
「普通に、結婚する。」
「誰と?」
「女と」
「だから」
「まだ決めていない。これから決める。」
「…あの辺の土地、父のものなんだ、遥には言っていないけど。病院を作れる場所かどうか確認してみる。」
「響…僕は別の形で幸せになるから。色々迷惑かけてごめん。でもさ、本当に、遥も響も好きだった。」
「知ってる。だから離れられないんだろ?」