ライブツアーin沖縄
「沖縄〜っ」
 思わず叫びだしてしまうほどの好天気。
 今回はACTIVEのライブツアーのみでやってきました。他には何の仕事も入っていません。
「写真集の撮影があるけど…」
 初ちゃんの意地悪!
「明日の午前中だけでしょ?」
「まあね」
 初ちゃんは今回一人だから何かと意地悪なんだよね。一人の理由は…家族が増えるんだけど。
 剛志くんはご存知の通り、空いた時間は斉木くんとずーーーっと一緒の予定。
 隆弘くんは…馬砂喜くんが着いてきている。
 そして聖は…いない。一人で留守番…の予定だったんだけど都竹くんが残っている。
 なぜ都竹くんが残っているのかと言えば…発熱!しかも39℃!
 …なのに…僕たちが沖縄に着いた途端にケロッと治ったって絶対に変!帰ったら問いただしてやる…と呟いたら零から小さく「小姑」と言われた…悔しいですっ。
「朝早くだったら大丈夫だよね?」
「何が?」
 零が本当にわからないと言う顔で問うので意地悪しないで教えることにした。
「海」
「寒いだろ?」
「甘〜い!沖縄はまだ泳げるんだってば…って泳がないよ。日の出が見たいんだ…零と二人きりで。考えてみたら二人きりの旅行なんてしたことないし。これからは聖も一緒に来てくれなくなるだろうから二人きりも増えるかもしれないけれど仕事もあるし、なかなか旅行は無理かもしれないし…」
「分かった!」
 途中で零に遮られた。
「陸とまともにデートしたことないからな、分かったよ…つーか、陸はそんなに僕とのこと、全力で考えていてくれたんだ。嬉しい。勿論僕だって考えてはいるけど…」
と、抱き締められた。
 いつも仕事に追われていて、プライベートで遠くに旅行に行くことはない。それは零も僕も子供の頃から同じ。
 涼さんもパパも仕事が忙しくて長い休みは無かったから。
 パパは今でもそんなに長い休みは取らない。だから相変わらず拓と実路は家族旅行を知らない。
 涼さんは創作活動がメインだから休みは自由に調整しているみたいだ。最近は時々ママと二人でふらりと国内旅行に出掛けて居るみたい。顔は有名だからばれる確率が高いらしいけどね。
「朝早くならイメージ探しとか言えば分からないよね?」
「うん」
 意外と素直に零は頷く。
「いや、陸は行動的だったんだな、って感心していたところ。なんか昔だったらあり得ないかなって。」
「そう?僕は前からやりたいことはやるけど?」
 零が少し首を傾げて考え込み、直ぐに合点がいった顔に変わった。
「そうだ、うん。陸は小学校に上がった頃から積極的になった。それまではいつもイジイジしていたのに急に積極的になったからこれなら大丈夫かなーって思ったら又泣いたりしてつかみ所がなかったな。」
 突然始まった回顧録に、僕はサクサクと回答をした。
「簡単だよ。零が隣に来たー!なんだか冷たい…。又遊んでくれたー!なんて感じだよ、僕の心の動きは全て零一色だった。今は零がそばにいてくれるから何でも出来るんだ、出来る気がするんだ。」
「陸…」
 そのまま、僕はベッドに押し倒された。



「零!陸!遅い!」
 初ちゃんが険しい顔で怒っている。マジだ。
「ごめんなさい、新曲のイメージが見えたから書き留めてたら遅れちゃった…」
「う…」
 僕はずるい。初ちゃんにこう言ったら許さないわけないんだと分かっていて言い訳した。
「なら…見せて。」
「部屋だけど。」
「後で良い。」
 まもるちゃん、四六時中初ちゃんと一緒にいてくれないかなぁ。
「無理!」
 え!僕は心の声が聞こえたのかと思い、慌てて顔を上げた。
「三人目だから。少子化に歯止めを掛けられるのは家だけなんだからな。」
 僕は周りを見渡した。
 本当だ。剛志くんも隆弘くんも少子化に拍車をかけている…。
「だから養育費の為にみんなに協力してもらわないとな。」
 僕は無言で初ちゃんに抱きついた。
「ありがとう。」
 初ちゃんは僕の言い訳が嘘だって見抜いている。
「新曲、楽しみにしている。」
 あれ?違ったの?
 僕は急いで初ちゃんの身体から腕を解いた。
「海を、見に行ってきた。」
「うん。」
 なんだ、知ってたんだ。
「イメージの海と本物の海は違うから、しっかり見ておいた方が良い。最近陸は創作活動に行き詰まっていたみたいだからな。」
「初ちゃーん。」
 僕は今一度初ちゃんの身体に抱きついた。
「まだ死にたくない。」
 そう言って突き放されると零に手渡された。
「いつも思うんだけどさ、二人は四六時中一緒にいて飽きないのか?俺はダメだな。まもるが常に一緒にいたら欲情しない。母親の顔をするからな。」
 すると零は何を言うかと思えば
「陸だって聖の前では母親の顔をする。だけどそれも可愛いから欲情する。」
と、平気な顔でのたまわった。
 僕は慌てて零の口を塞いで、
「僕がブレーキになっているから!」
とフォローした。
 が、無理矢理口から手を退けると
「うそつき。」
と言われた。そういうプライベートなことは外で言わないで欲しいなぁ。
「零はずっと陸ばかり見ていたんだよな、凄いな。どうしてそんなに一途なんだ?」
 …どうして初ちゃんは零にばかり聞くのかな?
「陸だから。生まれる前から決まっていたんだ、陸は僕の物になるってね。一緒の家で育たなくて良かったよ、物心着く前に性奴にする自信があるよ。」
 零は平然と僕を後ろから抱き締めた。
「セックス漬け?」
 あ…あの…初ちゃんが怪しい笑いを頬に浮かべたのですが…。
「そうそう。朝な夕なに鳴かせて、僕無しではいられない身体にしちゃう。」
 う…実際そうなんだけど。
「僕の顔を見たらすぐに腰振っておねだりして?」
「いいね〜ロマンだね〜」
 …ロマン?わかんない?
「じゃ、行くよ。」
 え?ええっ?…僕は二人にからかわれていたらしい、一人でドキドキしていたらサラリと話題を転換して仕事モードになった。
 とりあえず、五人のお仕事だ!


「隆弘くんと陸くん、もう少し近寄って…ん〜頬寄せ合うみたいな…そうそう、そんな感じで…はい、笑って…もう一枚!」
 浜辺でほぼ抱き合う形でワンパターン撮影する。零と初ちゃんバージョン、隆弘くんと剛志くんバージョン、初ちゃんと僕バージョン、零と剛志くんバージョンがある。
 勿論ワンショットもある。
 このあと、ホテルに戻って零と隆弘くんのパターンを撮って終わり。
 コンサートは明日夜。リハーサルは明日朝…限りなく昼に近い時間に会場へ行けばいい。
 なにしようかなー。
「観光、する?」
 いつの間にか隣にいた隆弘くんが声を掛けてきた。
「観光地で観光していたって変じゃないよ、行ってくればいいじゃん。」
「隆弘くんは?」
「海に行きたいらしいけど流石に午前中だけじゃ無理だろうな。」
「…今朝、行ってきた。見るだけでも癒やされるよ。」
「そーだな。」
 隆弘くんはにっこり笑った。
 馬砂喜くんと付き合い始めてから優しい雰囲気が漂ってる。
 ただ…最近は恋愛と言うより同志って感じ。仲は良いんだけどね。
「さっき、」
 隆弘くんは言いよどんでいる。
「さっき?」
「うん。さっき、初に抱きついてたじゃん?陸はああいうこと、変だなって思わないの?」
 変?意味が分からない。
「普通は抱きつかないよ。」
 …そうかも。
「確かに変…だよね。何でだろう?」
「馬砂喜がさ、女装するとそんなことするんだよね。陸って基本的に内面が女性寄りなんじゃない?」


 え?
「女性寄りってなに?」
 真面目に分からない。
「まあ、簡単に言えば女っぽい?」
 女っぽい?
「…男らしくない?」


「それとは違う。」
 いいや、隆弘くん、今一瞬言いよどんだ!マジで?本当に?えー!
 …僕はパニクった。


 撮影が終わると僕は転がるようにしてホテルに戻った。
「どうした?息急ききって…」
「僕、男らしくない?」
「何?いきなり…」
 隆弘くんから言われたことを零に話す。零は無表情に腕組みをして話を聞いていた。
「まあ、仕方ないんじゃないかな、陸はおばあちゃん子だから。」
「おば…」
 ただ絶句するしかない。
「ずっとおばあちゃんに育てられたんだろ?裕二さんだってなんとなく女性的な所があるし陸のおばあちゃんにはそういう所があるんじゃないかな?」
 なんか、違う気がする。
「でも!」
「何?陸は隆弘に好かれたいわけ?」
 黙って首を左右に振る。
「なら良いんじゃないかな、陸が女性寄りだろうが男性寄りだろうが、僕は陸が好きだから。」
 あ。
 そっか。
「でも誰彼構わず抱きつくのはイヤだな。」
「うん、気を付ける。」
 僕は零が好き。他の人に何と思われようと僕は僕のスタイルを貫く気持ちでいれば何も悩む事なんてないんだ。
 なーんだ。


 水族館。
 零と二人で歩いていたら何人かに声を掛けられたけどそんなに多くはなかった。当たり前だよね、お客さんは魚たちを見に来ているんだから周囲に気を配っている人は少ないんだ。
 大きな水槽の中で泳ぐ魚たちを見ていて、聖を連れて又来たいと、思った。
 聖が大人になろうと、好きな人が出来て離れていこうとも、ずっと聖は僕の大事な息子だから。これだけは変わらない。
「前に聖と三人で水族館に行ったよな?」
「うん。」
「もう無理かな?」
 零も同じ事を考えていたみたい。
「大丈夫だよ、僕たち家族だもん。」
「そーだな。」
「そーだよ。」

 ん?
 声のした方を振り返る。
「聖!都竹くん!」
 なぜか、二人が後ろに立っていた。


「都竹くん本当に大丈夫?」
「はい、ご迷惑掛けてすみません。」
「聖は?」
「文化祭の振休。」
 そうか、振休か。…ん?
「なんでー!文化祭なんて知らないよー!」
 すると聖は不敵に笑う。
「言ってないもん。隼くんだけに来てもらった…つもりなのに、まもるちゃんもいた。」
 ふーん。そういうことか。
「で?何をやったの?」
「一年だもん、何もやらないよ、ただの裏方…あ…」
 ふ、語るに落ちた。
「僕は聖の部活も知らない…。」
 左下に視線をさまよわせる。
「分かったよ、言うよ!…料理研究部と陸上部。」
 聖の中学は一年時、文化部と運動部両方に所属する。文化祭後にどちらかを選択する。
「って、体育祭も終わってる?」
「うん。」
 計画的犯行だ。
「料理をやりたいなと思うんだ。今は調理師になりたいかな?」
 聖は毎日なりたいものが変わる。
「好きなことを見つけたらいい。」
「うん。」
 そう言うとじっと鯵を見つめた。おーい!
 なんだか僕、からかわれてる?
 でも思わぬ贈り物に僕はただただ感謝した。
 やっぱり聖は可愛い。出来ることならこの場で思い切り抱き締めたい。
「陸ー、なにしてんの?置いていくよー!」
 声に促され顔を上げると、すでにみんなはかなり遠くの水槽前にいた。


 今回、都竹くんはスタッフから外れているので、聖の見張りも兼ねて客席にいる。
「学生の時以来です。」
と、嬉しそうに笑った。そうだった、都竹くんはACTIVEのファンだったんだ。久しぶりにゆっくりステージを客観的に見てもらえる。あとで感想を聞かなきゃ。
 でも、ステージの上から二人を見つけたらなにやら楽しそうに話し込んでいた。…不覚にも嫉妬した。
 子離れできない…。


「ふ…んんっ…」
 ライブ終了後、みんなでご飯を食べに行き、少しアルコールも入って睡魔も襲ってきたのでホテルの部屋に戻ろう、となったのは午前一時だった。
 その間、聖はずっと一緒にいたのに今は都竹くんと同じ部屋に泊まっている。
 気になって都竹くんに電話をしようと携帯電話に手を伸ばしたときだった、零に抱きすくめられ、押し倒された。
「あふ…ぅ」
 あまりにも執拗な愛撫が続き身体の奥深くが疼いた。
「んんっ…あ…れい」
 両腕を伸ばし零の背にしがみつく。
 欲しい、零が欲しい。
 下半身を零に押しつける。
 それでも零は愛撫を続ける。
「陸が聖を見て嫉妬すると僕が聖に嫉妬するって気付いたか?」
 息も絶え絶えの中、首を左右に振る。
 知らなかった、そんなこと。
「僕を醜い感情に走らせた罰、自分から挿れなさい。」
 言うと零はベッドに寝転がり僕の足を引いた。
 しばらく躊躇ったが欲望には勝てず、自ら跨いで受け入れると抽挿を開始する。
「い…あ…んっ…」
 零を受け入れた場所が零をキツく締め付ける。
「や、ダメだって!」
 零が動きを封じる。
「陸は僕だけ見てればいい。」
「うん。」
 僕は素直にうなづいた。
「やっぱり聖より陸の方が可愛い。僕はダメな父親だな。」
「聖の方が可愛いって言われたら離婚するもん。」
 零の前ではいつまでも可愛いって言われたい。零の腕に守られて生きていきたい。
 これって…男性としては失格だよね。
 ま、いっか!