クイズでGO!?
 あー!
 『か』で始まる四文字熟語?
 つーか、この番組五人一組だから全員で出るんじゃないか。やっぱり僕がからかわれたんだよな?悔しい…。
 あ、『か』だよね、か。
 …
 …
 家庭教師しか出てこないし〜。
 四文字熟語じゃないし〜。
「か、か、か…」
「東野英治郎さんの水戸黄門みたいだね、かっかっか!」
 無視!
「辛子明太子!あ、亀戸天神!」
「五文字だし、熟語じゃないし。つーか僕のこと無視だし…隼くんと電話でえっちなことしよっと。」
「ダメ!…か…か…」
「なら、」
「忙しいんだよ」
「花鳥風月、簡易裁判、価格破壊、過剰摂取、閑話休題、嘉辰令月。」
「スゴい!聖って国語得意なんだ。じゃあ『は』は?」
「波瀾万丈、配置転換、花見遊山、半信半疑…かな?」
 流石現役中学生、間髪入れずすらすら出てくるんだ。…頑張ろう。
パタン
 ん?
 聖の膝の上には漢字辞典が置いてあった。


「タレント?わからない…」
 都竹くんが出題してくれた問題は更に難関。愛の字が付くタレント名だ。
「愛…漢字なんだ…愛…」
 頭パンクしそう。
「仕方ないですね、タレント名は諦めましょう。次は漢字問題です。あいしゅう漂うの『あいしゅう』は?」
「鍋蓋のかなしいに、秋に下心のうれう(哀愁)」
「正解、じゃあ花のばら」
「無理。説明できない」
「ダッシュボードにメモと鉛筆が入ってます」
「…ごめんなさい、書けません」
 素直に観念した。
「ちなみに僕も書けません」
 そう言うと都竹くんは笑った。
「でもかなりの難問もあるみたいですよ」
「…零はどうして出演しようなんて言ったんだろう?」
「最近、インターネットで音楽をダウンロードできるようになったから、CDはあまり売れないんです、一部を除いて。だからじゃないですかね?折角苦労して作ったのに売れなかったら死活問題ですから。」
 そうなんだ。
 レコード時代は再利用が出来なかったんだけど、CDは一度録音してもそのディスクは再利用が出来るんだ。それが原因で大量にCDは出回る。
 しかし更なる問題は安価でダウンロード出来ること。
 ダウンロードして、聴く。
 聴かなくなったら削除すれば跡形もなくなる。
 だからパパもジャケットに拘った。
 あとはプラスアルファが必要だ。
「あの…聖くん、元気ですか?」
 都竹くんは最近聖と故意に連絡を取り合っていない。互いのことを考えての結論だ。
「直接聞いたらいいのに。」
 僕は今朝、聖にも同じことを言った。
「…制御が利かないんです、会ったら、声を聞いたら…襲ってしまう自信があります。淫行です、これは。」
 まあ、そうだね。まだ13歳だからね。
「まさか、自分が少年に走るなんて考えてもいませんでした。いくら零さんの…」
 そこまで言って、肩が跳ねた。
「まさか…」
 そして独り言。
「陸さん…キスしていいですか?」
「何?な…」
 信号待ちの隙をついて唇が軽く触れた。
「まさか…ね…」
 しかし都竹くんは何か思案の底にいた。


「…で?結論は出た?」
 運転中ずっと思案していたらしく心ここにあらず…と言う顔だったのでハラハラしたけど、ちゃんと周囲に注意は払っていたので見守ることにした。
「さっきからずっとドキドキしてます…零さんに殺されるんじゃないかと…」
 は?
「僕ってば陸さんにキスしちゃったんですよ?あまりにも大胆だな…って。」
「斉木くんともしたよ。あ、剛志くんには内緒ね。」
「そう、なんですか?」
 都竹くんが安堵の表情を浮かべたので再度問いただした。
「私は、零さんに憧れてました。だから聖くんを身代わりにしているのかと思ったんです。だったら僕たち、付き合いを続けられます。でも…私は初めから恋愛じゃないんです。」
 意味が解らない。
「都竹くん、聖に対して恋愛感情を抱いていないってこと?」
「いえ」
 即答だ。
「彼を、守ってあげたいのは事実です。だけどそれがどういう感情なのかを持て余していました。零さんに対しては憧れだった、陸さんに対しては…恋していました。」
 え?
「何度も自分の気持ちを否定し続けたけど無理です。随分前に陸さんに零さんと寝たいと言ったのは陸さんへの感情を否定したかったからです。委員長…夾さんが陸さんを抱いたって聞いたときに嫉妬した自分に気付きました。それで自覚しました。…聖くんへの気持ちはそれに似ているんです。でも…」
 都竹くんは言葉を止めた。
「でも?」
 僕は先を促す。
「陸さんが好きなんです。どんどん大きくなるんです。それと一緒に聖くんへの気持ちも大きくなっていく…どうしたらいいのか解らない…」
「だから前に言ったじゃないか。これ以上は僕からは言えない。都竹くんと聖の問題だからね。…もしかして年齢で悩んでる?まあ、十一歳も離れてれば気になるか…」
 都竹くんが悩んでいるのは多分違うことだ。
 でも僕にはどうすることも出来ない…。


 今日は久しぶりに歌番組の収録だ。司会者が最近、二十歳年下の女性と結婚して話題になった。
「こんばんは。今日は宜しくお願いします。」
 彼とは何度も一緒になっているので挨拶くらいは交わす。
「野原くんは相変わらず擦れてないね、いいねー。」
「そんなことないですよ。それよりご結婚おめでとうございます。どうですか?新婚生活。」
「すごくいいよ!結婚はしてみないと良さが解らないよ、うん。」
「あの…ジェネレーションギャップとかないんですか?」
 彼は少し考えた。
「多分、有るんだろうけど彼女とは現在進行形と未来の話しかしないんだ。」
 …そーか!
「共通の話題が有れば問題がないんですね?そうですよね、うん。」
 僕は一人で納得してその場を辞した。早速都竹くんに教えてあげよう。


「え?」
 そんな…。
 二人の共通の話題が僕なんて…あり得ない。


 さて。
 零に聞かれたらまた余計なお節介と怒られそうだからここら辺で手を引こう。とりあえずはクイズ番組に本腰を入れないと。
 き…き…
 奇人変人、奇想天外、奇々怪々、喜怒哀楽…少ないな。
 くで始まることわざ。
 苦有れば楽有り、臭い物には蓋をしろ…。
 キリがないな。
「く、く、く…」
「今度は鳩?」
 聖が又楽しそうにやってきた。
「ねぇ聖。都竹くんと普段どんな話をするの?」
「教えない」
「けち」
「苦渋の選択…だね」
 ニヤリ
 聖が不敵に笑う。
「この間はさえちゃんのシングル曲っていう問題があったよ。悪足掻きは止めた方が良いよ…」
 そんな感じがする…。
「隼くんは陸の話をしてくれるんだ、いつも。失敗談とか武勇伝とか。だから一緒にいられなくても寂しくなかった。隼くんが気を遣ってくれていたのはわかっていた。だから段々気持ちが変化したんだ。正直言ってまだ解らない、これがなんと呼ばれる気持ちなのか。でもね。二人とも相変わらず陸が大好きなのは変わらないんだ。」
 聖…それは…困ったな…。



 お陰で、クイズ番組では僕が足を引っ張りまくったのですが、何とか決勝まで行きました…そこで負けたんだけどね。


 あれ?トロッコはどこにあったんだろ?
 え?スペシャルだからない?
 がーん。