サプライズ!!
 珍しく一人の仕事が入った。しかも大阪。
「えっと、靴下、タオル、パンツ、Tシャツ、上着…こんなものかな?二泊三日だよね?」
「そう。」
 陸がせっせと荷造りしているのを僕は見ている。
「陸は…なんでもない。」
 寂しくないのかなんて聞けない。
「風邪引かないように気を付けてね。零はすぐに冷房入れるから。あ、腹巻きも入れておくね。」
 自分の母親はこんなにせっせと世話を焼いてはくれなかったなぁと考えていたけれど、自分が本当に小さかった頃には鬱陶しいほどまとわりついていた
ことを思い出した。
 実紅と夾が生まれて、色々と忙しくなって、陸が生まれて…陸のことばかり考えるようになった。
「どうしたの?」
 陸が不思議そうな顔をして見ている。
「陸は誰に似たのかなって。」
 突然何を言い出すんだという顔で、それでもちょっと考え込んだ。
「多分、ばあちゃん」
 言われて納得する。
「零はどう考えてもお母さんだよね?」
「あきらちゃん?」
「うん」
 そうかな?あんなかな?
「誰のことも平等に愛してる。」
 え?
「お義父さんのことも、父のことも同じように…零と実紅ちゃんと夾ちゃんと聖と僕も分け隔てなく愛してくれる。」
 陸にはあきらちゃんがそんな風に見えるんだね。
 荷造りが終わってふと部屋の隅に目を移すと、そこに風呂敷包みが置かれている。
「陸、あれは?」
「あ、忘れてた。これはホテルで開けてね。」
 そう言うと慌ててキャリーバックに仕舞った。
「なんで僕だけ大阪のテレビ局に行くんだろう?」
 新曲の宣伝なんだけど。
「辰美くんが一緒でしょ?」
「うん…でもなんで二泊三日なんだろう?」
 何とも謎の多い仕事なんだよなぁ。
「この間、テレビ局で一緒になった人達がね、泊まりの仕事の時には靴も持って行くって言ってた。」
「なんで?仕事は衣装を用意してくれるし、移動するだけなのに履き替えるのかな?面倒くさいな。」
 僕はTシャツにジーンズで十分、足元はスニーカーだしね。
「あ、今日はこっちを履いて行ってね。」
 そう言って差し出されたのは黒のコットンパンツ。ちよっと細身で流行の形だ。
 着る物に関しては陸の言うことを聞いておけば問題ないから文句は言わない。
 しかし何故ジーンズではないのかが謎だな。
「そのパンツ、好きなんだもん。」
 顔に出ていたか、陸が顔を赤くして言い訳をした、可愛いな。


「それじゃあ、行ってくる。」
「いってらっしゃい〜」
 やっぱり、あっさりしている。
「陸、忘れ物。」
「忘れてないよ、しらばっくれてるだけ。」
 そう言うと肩に手を載せてきて少し背伸びをする。そのまま僕の唇に陸の唇を重ねる。
 その一連の流れが相変わらず可愛かったので抱き寄せて深く口付けた。
「んっ」
 陸はされるがままになっている。そんなときは陸もそれがしたかったってことなんだ。
「…陸は、三日間何しているの?」
 びくっ
と、肩が震えた。
「ごめん、一日はオフ、一日は観劇、今日はギターの仕事でレコーディング。」
 そっか…陸も忙しいんだな。
「じゃあ。」
 陸に背を向けて出掛ける。
 明後日まで会えないだけで物凄く哀しい。


 「おはようございます」
 テレビ局に着くと控え室に通された。暫く待機しているようにとのこと。
 ふと、風呂敷包みが気になった。陸はホテルに帰ったらと言っていたけど暇だからいいや。
 バッグを開けて風呂敷包みを解いた。
「なんで?仕事?」
 そんな独り言を呟いても謎は解けない。
 中には浴衣と帯が入っていた。


『えー!もう開けたの?信じらんない。』
 電話の向こうで陸が文句を言っている。
 これは何かとメールで尋ねたら電話で返ってきた。
「あれ?陸レコーディングじゃなかったのか?」
『え?あ、うん。』
 怪しい。なんかリアクションがおかしい。
「陸、もしかして、」
 言い掛けたとき、背後で聞き覚えのある声が聞こえた。
『零?』
 なんで?なんで隆弘がそばにいるんだ?
 いや待て。メンバーだから個人的に話があってもおかしくはない。
 でも。
 わざわざ僕が居ない時を狙ってくるなんておかしい。
『零、隆弘くんがね、』
と、電話の向こうから陸が話しかけてきていた。
「なんで隆弘がいるんだ?」
『レコーディングが一緒だから。って、先週の打ち合わせで話したじゃないか、新人の音入れするって。隆弘くんも剛志くんも初ちゃんもいるよ?
いないのは零だけ。』
 そうだっけ?覚えていない。
『その浴衣と帯は夜に説明するからね、じゃあ。』
 誤魔化すように言葉を並べて慌てて電話を切った。
 なんか変だ。
 まさか、でも…浮気…じゃないよね?
 不安だ。
 早く仕事を終えて帰りたい。


 収録はVTRを見ながら談笑して新曲の宣伝して終わり。何のための二泊…。
「なぁ、辰美。明日は何の仕事?」
「え?零さん打ち合わせしたじゃなですか。オーディション番組の審査員です。」
 何だろう?今日は調子が悪いのかな?
「そーか。」
「陸さん居ないと調子悪いですね。」
「まあね。」
 大阪の知り合いにメールしたけど全員都合が悪くて辰美と二人で食事をしてホテルに帰った。
 今夜は早く寝よう。
「じゃあな。」
「はい、おやすみなさい。」
 辰美が満面の笑みで部屋に入って行った。何か変だ。
 鍵を開け、ドアノブを回す。
「おかえりー」
 …
「ただいま」
「あからさまながっかりだね。」
「まあね。」
 大体分かってはいたけど。
「高校生になっても相変わらず暇なんだ。」
「暇じゃないよ、部活を休んできたんだよ。」
「聖じゃなくて陸が良かったな。」
「悪かったね。」
「で?何しに来た?」
「え?本当に気づいてないの?」
「気付いてっ…て、あ!」
「わかった?」
「わかった」
 自分の馬鹿さ加減に腹が立つ。
 そして陸が愛おしくて切なくなる。
 どうしてこんなにいつまでたっても可愛いのだろう。
「この部屋、ダブルだから。じゃあね。あ、辰美くんはもう帰ったから。あとは陸が来るだけ。」
「聖は?」
「帰るよ?」
「何しに来た?」
「零くんをからかいに。」
 じっと、目を見つめる。
「待ってよ、読まなくていいから。昼間に四天王寺へ行ってきたんだ。どうしても行ってみたくて。」
「どうして四天王寺?」
「夏休みの宿題に。あの寺の創建は聖徳太子って言われているけど、元々あったものらしいんだ。その辺を調べるのに一度見ておきたかっただけ。」
 そう言うと手を振って部屋を出て行った。
 …あいつ、いったいどんな宿題をやっているんだ?大体古文なのか?日本史なのか?建築様式とか、美術なのか?ん〜…。…あとで陸に聞いてみようと、
自己完結したときだった、携帯電話が鳴った。
 相手は…。
「どうした?」
『そっちに聖いる?』
「居るよ。っていうか居たよ。さっき帰るって言って出てった。」
『捕まえて!』
 ブツッ
 電話が切れた。
 捕まえる?そりゃ、大変だ。
 慌てて踵を返し表に出た。
 さて、聖はどっちに向かったんだろう?
 とりあえずロビーへ行きカウンターで聞くことにした。
「あの、僕に顔立ちが似た高校生で髪が茶色い子通りましたか?」
 男性スタッフに声を掛けたのだが返ってきたのは女性スタッフ。
「はい、今さっき表に行かれました。出て駅の方に歩いて行かれたようです。」
「ありがとう」
 急いで後を追う。
 聖の髪は夏休み中は地の色だ。どうして普段は黒に染めるのか?それは校則だから。
 幼稚園の頃からそれは当たり前になっていた。
 それを普通にしてしまったのは僕のせいだ。もっと親らしく毅然とした態度で幼稚園や学校に説得して置けば良かった。
 今ならそう思える。だけど当時は…自分が親だって言う自覚がなかった。
 子供が産まれるようなことをしたんだから当たり前なんだけど、それでも自覚がなかった。
 涼ちゃんは偉いと思う。高校三年で責任をとった。
 抱き締めるだけでは幸せにはなれない。好きなだけでは幸せにしてあげられない。
 男として家庭を支えるには経済力は欠かすことが出来ない。そしてなによりも覚悟が必要だ。
 そして逃げてばかりいる僕に陸は覚悟を決めさせてくれた。
 なのに僕は陸のことしか見ていなかった。聖のことは見ていなかった。
 …電話すればいいんじゃないか。今気付いた。
『もしもし?』
 すぐに電話に応答した。
「何処にいる?」
『え?何で?』
「陸から取り押さえろと指示があった。」
『そっか。僕はまだ家族の中に入れてもらえるんだ。』
 電話の向こうでは聖が微笑んでいる。
「当たり前だろ?バーカ。早く戻ってこい。」
『だから部屋はダブルだよ?』
「川の字で寝ればいいじゃないか。」
『子供じゃないし。』
「ごめん」
『なんで?』
「僕は良い親じゃなかった。っていうか今でも良い親じゃないし、これからも難しい。」
『しょうがないよ、零くんは陸が大好きだからさ。』
 途中から声が後ろから聞こえた。
「行くぞ。」
「うん…はい、たこ焼き」
 聖の手からビニール袋が渡された。
「昔、零くんがお土産にたこ焼き買ってきてくれた。家に居たときみたいに居ない存在じゃなかったよ。僕が陸を好きなのは僕の存在を認めてくれて
いたからなんだって気付いたんだ。零くんみたいに恋愛感情じゃ、なかった。」
 俯いて照れながら話す聖が、大人に見えた。
「今度恋をするときは僕だけを見てくれる人を探すよ。」
 胸が痛くて声が出なかった。
「零くん?泣いてるの?」
 頬に涙がこぼれていた。
「ありがとう」
 それだけ言うのが精一杯だった。
「泣かないでよ、陸に怒られる、零くん泣かしたって。」
 聖の手が僕の手を掴む。
「零くんは父親なんかじゃない、ずーっと、零くんだから。僕にとって大切な人。だから長生きしてね。」
 いつもなら文句を言うところだけど、今日はただただ頷くだけしかできなかった。


「明日ね、休みをもらったんだ。三人で久しぶりにデートしよう?」
 ホテルの狭いバスルームでそれぞれがバスタイムを済ませ、陸と僕はビールで、聖はコーラでたこ焼きを堪能しているときだった。
「陸、僕は遠慮するよ。」
「だーめっ!聖がいるからうちは家族として成立しているの。それに、零の誕生日だからね。」
 えーと、今陸に悪意のある強調が有ったように思うけど思う壺にハマるので無視しよう。
「浴衣は?」
「明日ね、花火大会があるから三人で行こうと思ったんだ。聖のもあるよ。」
 陸の荷物は陸と聖の服で埋まっていた。
「明日は忙しいからね、寝るよ〜!」
 嬉々として張り切る陸はやっぱり可愛い。…言ったら怒られるけどね。
 再びバスルームに追い立てられ、歯磨きを済ませると本当にダブルベッドに川の字になって寝た。聖を真ん中に、三人で。
 昔、聖が幼稚園に通っていた頃、三人で寝たことがあったと思い出す。日に日に、大きくなっていった聖。
 そんなことを考えていたらいつの間にか眠りに落ちていた。

「れーいーくんーっ」
 やけに息苦しそうな抗議の声に、頭が覚醒してくる。
 僕の腕の中で、聖がじたばたと暴れている…ってなんでだ?
「おはよう」
「おはようじゃないから。僕を抱き枕にしないでよ、まったく。」
 ぶつぶつ言いながらバスルームへ入っていった。
「次のホテルに移動するよ!」
 既に着替えが済んでいる陸は、朝から張り切って荷造りしていたと思ったら、今夜の宿泊先は違う所に予約を入れたらしい。なんだか
忙しいヤツだ。
「急いで急いで〜」
 キャリーバックを一台手渡され慌てて部屋を後にした。
「大阪と言えば立ち食いうどん!」
と、思いっきり誰かからの受け売りを真に受けて朝からうどんを食べると、レンタカーを借りて聖の宿題の続きをするため、聖徳太子の墓
と法隆寺を見学して来た。
 急いで戻って来たけれど、花火大会ギリギリだった。レンタカーを戻し、ホテルへと向かった。


「陸っ」
 部屋の中から聞き覚えのある声がした。
「隆弘くんっお待たせぇ」
「おおっ、待った待った。早く着替えなよ。」
「うん」
 二人があまりにも普通に会話をしているから、口をはさむことができない。
「初ちゃん、まもるちゃんっ」
 今度は子供たちを連れた初一家が現れた。…もう驚かない。きっと全員いるんだ。
 陸に伴われてやってきた部屋は最上階のスイートルーム。ここに全員集合しているようだ。
 案の定このあと剛志と斉木、馬砂喜くんと帰ったはずの辰美、それに都竹が現れた。
 そしてリビングにはパーティーの準備がされていた。
「この部屋、寝室がいくつあるんだ?」
「5つかな?」
 平然と回答が戻って来た。一体いくらするんだ?なんて無粋なことを想像してはいけないんだよな。
 割り振られた部屋で、陸が用意してくれた浴衣に着替えた。
「零、30回目のお誕生日、おめでとう。」
 …ん?30回目?え?30歳?僕は今年30歳だったのか…すっかり忘れていた。
「だから、こんなに盛大なのか?」
「今気づいたの?」
「うん」
 その場にいた全員が苦笑している。でも本当に自分の年齢なんて数えている余裕がなかった。この11年間、必死で走っていた。多分、全員そう思っているん
だろうなと、勝手に思っている。
 そろそろ時間だと陸が告げ、全員でホテルのバルコニーへ出た。
 今夜のイベントはホテルの目玉でもあるらしく、バルコニーにはテーブルと椅子が用意されていてゆっくり座って鑑賞出来るようになっていた。
 それぞれの家族が各々テーブルに着く形になった。
「零くん、陸、僕は隼達の方に行ってる。」
 有無を言わさないスピードで移動していった。
「あいつ、いいのかな?」
「気にしてないと言ったら嘘になるだろうな。でも普通に笑ってる。」
 都竹の耳元に口を寄せて、なにやら内緒話をするような感じで微笑み合っている姿は、別れ話をして何日も泣いていたのが冗談だったような仲睦まじさだ。
 その内、辰美が聖の腕を掴み引き寄せると、都竹が抱き寄せるなど本当に別れ話をした二人なのか疑問が芽生えてくる。
「ヨリを戻そうとしているのかもしれないよ?お互いに。まぁ、違っても友達が多いのは良いことだよ。」
 陸も三人の様子を見ていた。
「二人の交際、反対したけどお似合いだったのかもと最近気付いた。次に聖が誰かと付き合っても、もう色々言わないことにした。聖が選ぶ人に間違いはない。」
 陸は独り言のようにしゃべって納得したけど全くの同感だ。
 ドーンと景気の良い音で花火が上がった。
「陸」
「ん?」
 陸は空を見上げたままこちらは見ない。
「これからも見捨てずにそばにいて欲しい。」
 やはり、微動だにしない。
「愛想を尽かされるのは僕の方だよ?きっと。」
 声が切なげに聞こえた。
「そんなことない。陸の日常は見ていて飽きない、刺激の多い毎日だからな。」
 微笑みながら「そうなんだ、へー。」と呟き、僕の左手に手を重ねた。
「この企画はみんなに話したら直ぐに賛同してくれた。零はみんなに愛されてて素敵だよね。」
 陸もいろんな人から愛されているじゃないか。そして陸を一番愛しているのは家族だ…勿論その中に自分も含むに決まってる。
 こんなにいつまでも、胸がどきどきするほど想いを持続できる相手は他に現れないだろうし、体力が保たないから他にはいらない。
 後で、思い切り抱きしめてキスしよう、お礼の意味を込めて。
 お腹に響く大音響で、夜空に花火が咲き誇る。
 僕は、ずっと、ずっと幸せだ。
 何があっても、幸せの真っただ中にいるって、信じられる。
 それは、愛する人がそばにいてくれるから。


 …
 …
 なんだ?これ。
 夕べの花火大会が終わると、再びリビングで大宴会が始まり、誰もが酔っ払い状態になり。
 子供たち(勿論十代の聖も含む)は何とか一部屋に押し込めて寝付かせ、大人たちはどんちゃん騒ぎ。
 確かに楽しかったし、浴びるように呑んだ。
 けど…。
 全員リビングに倒れてるってどういうことだよ。
「まもるちゃん?子供たちは大丈夫なの?」
 不安になって声を掛けた。
「ん〜?」
 ダメだ…。
 起き上がって立ち上がる。
 足元がふらふらするけど何とか歩けたので、寝室を覗きに行くと、聖と都竹がぐったりと倒れこむように初の子供二人の横で寝ていた。
つまり初は聖と都竹に子供の世話を一切押し付けて騒いでいたということになる。段々腹が立ってきた。
「おーい、初っ、どうして聖がお前んとこの子供、見てるんだ?」
 寝室の入り口で不自然な格好で寝ていた初の耳元で囁く。
「あー、酒臭いって聖くんに追い出された。」
 あ、そういうことね。一応初も参加していたわけだ。
 しかし。イライラする。どうしてこんなにイライラするのか。原因は分かっている。
 夕べも一昨日も、陸に一切触れていないからだ。
 離れているなら我慢できる。でもこんなにそばにいるのに、手を握っただけなんて触れたうちに入らない。
 陸を起こして空いている寝室に連れ込もうと思った瞬間だった。
 誰かのスマホが大音量で鳴り響いた。
 その音に全員が飛び起きる。
「なになに?」
「なにがあった?」
「朝?」
「眠い」
「うるさいな」
「火事…?」
「…」
 イライラしていたけど面白いものが見られたのでちょっと気分が回復した。
「零?」
「おはよう」
「おはよう」
 寝ぼけ眼の陸が、ぼんやりと座っている。
「楽しかったけど…ちょっと呑み過ぎちゃったね、頭が痛い…」
「そうだね。」
 別に頭も痛くないし二日酔いでもないけれど、ほんのり頬をピンクに染めて二日酔いアピールしている陸が可愛かったから肯定しておいた。
 そうだよな、仲間とこんな風に楽しい時間を過ごすのだってたまにはいいじゃないか。
 最近は自分たちの「家庭」が出来てしまったためにこんな風に集まることもなかった。
 これからは時々「家族」で集まるのもいいかもしれない。
「おはようございます。みなさん、部屋の片付けをして帰京準備に入ってください。帰りの新幹線は13時7分発です。」
 おいおい、帰りも一緒かよ。
 今夜は絶対、誰にも邪魔はさせないぞ。



「え?宿題?」
 その夜。疑問に思っていた聖の宿題について質問してみた。
「論文。今回は聖徳太子についてなんでもいいから書けって言われたんだよね。だから聖徳太子が建てたと言われている寺院について調べたんだ」
 そうか…最近は高校生も大変なんだな…。