もしも、願いが叶うなら…

 神様、僕は無宗教です、ごめんなさい。
 でももしも…もしもこんな僕でも願いを叶えてくれるのなら、お願いですから、パパが幸せになるよう、手助けをして下さい。



 事務所の会議室でミーティング中、零の携帯がけたたましくなった・・・鳴る様に設定したのは零だ。
「うん、そっか。わかった、うん、元気なのか?そっか、うんうん・・・」
 相手は分っている、夾ちゃんだ。
 可哀想に今回も夾ちゃんは連絡係をやらされている。
 携帯電話をきって、すぐに零が振り返った。
「弟だってさ。」
 …男の子…なのか。
「そっか。」
 あまりにも素っ気無さ過ぎたかな?
「嬉しくないの?」
「うーん・・・なんか『弟』って言われてもピンとこないよ。」
「そっかな?」
「うん…」
 僕のパパが今年の初めに結婚した。
 一応初婚。
 で、相手は零の実妹、僕の義姉、パパが愛した人のたった一人の娘、実紅ちゃんだ。
「難産だったらしいよ、ママがそう伝えてくれってさ。」
 ママは実紅ちゃんにつきっきり、パパも仕事を入れないでこの時期は家にいたらしい、他のお父さんたちと同じようにきっと廊下をウロウロしていたのだろうな。
(事務所の社長…パパの高校時代からの親友で他にも会社を経営しているやり手の人なんだ。パパがお願いして社長に就任してもらったんだよ…が「ACTIVEがいなかったらこんな個人事務所、潰れていた」って本気な顔して言っていた。)
 今度は僕の携帯が鳴った、絶対パパからだよ。
「もしもし?」
『陸?産まれたよ、男の子だ。名前はな、≪たく≫にしようと思っているんだ、どう思う?開拓の≪拓≫だ。』
「どうって、パパがいいなら…」
『陸に決めて欲しいんだ。でもさ、お前が≪陸≫だから切り開くって意味で≪拓≫なんだけどさ。』
 そんな嬉しそうに電話口で話さないで。
「そうだね、素敵だね。」
『…なんか嬉しく無さそうだな?陸は全然家に来なくなったし…』
「そっかな?まぁ、仕事忙しいし、パパには事務所で時々会っているし…じいちゃんとばあちゃんには…そのうち会いに行くよ。」
『実紅にもたまには会ってやってあげてくれよ、一人で寂しそうだ。』
「僕は…零のことで頭が一杯…」
『そっか…まぁ拓にも会いに来てやってくれ、じゃあ。』
 パパ…パパは僕へ、実紅ちゃんに拓に…会って欲しいなんて言うんだね。
 ツーツーツー…と、電話が虚しい音を伝えていた。



「あ・・・」
 零の細くて長い指が僕のアナルに1本、また1本と埋まって行く・・・。
「ここ、感じるんだろ?」
 解っていて、聞く。
 僕は声を出さずに頷く。
「ちゃんと声に出してごらん、どこが良いのか・・・」
「えっち」
 動きを止める。
「いやんっ、止めないでっ」
「えっちなことしちゃいけないみたいだから」
「意地悪」
「うん、僕は意地悪だ・・・言ってごらん、さぁ。」
 うぅ・・・
「もう少し、奥・・・あっ、前・・・あんっ」
 僕の中で指を折ったり伸ばしたり、グラインドさせたりする。
「あんっ・・・あんっ・・・」
「可愛い声で鳴かないでよ・・・我慢できない。」
「でも・・・あぁっ・・・」
 指の動きはそのままで深くくちづけられる。
「んんっ・・・」
 駄目、零・・・イッちゃうっ。
 零の唇はゆっくり僕の身体を這って下りていき、左の乳首で止まり、そのまま口に含む。
 舌でコロコロと転がされる。
「ああんっ」
 意識しなくても声が出てしまう…こんなに僕を感じさせてくれるのは零だけ。
 零だけに僕の全てを投げ出したい…。
「零…嫌だっ、指じゃ駄目・・・もっと太いの、頂戴。」
「何が欲しいの?」
「・・・零の・・・」
「僕の?」
 意地悪ぅ・・・
「ペニス」
「これ?」
 そう言って僕の右手を零の股間に導く。
 硬くて、大きくて、熱くて、力強く脈打つ零のペニス。
「…欲しい…」
「どうすればいいの?どうすれば陸が気持ちいいの?」
「もう、もうっ・・・」
「言わなきゃ解らない。」
 その眼は僕をじっと見つめていた。
「陸?」
「零、零が下になってよ。僕上に乗るから。」
 ベッドに寝かされて零の好き放題にされていた身体を起こす。
 零は楽しげにベッドに横たわる、僕はその身体を跨ぎ自ら屹立したペニスをアヌスにあてがい、ゆっくりと埋め込む。
「ああっ」
 声を上げたのは僕。
 深く…深く、零を感じる。
 狂った様に快感を貪る、僕。
「あんっ、あん・・・」
 淫らに動く、腰。
「イイッ・・・」
 あぁ、どうにかなりそう。
 あと少しで僕は達しそう…って時に突然、零は僕の腰を両手で押さえた。
「今日の陸…変。」
「うぅ・・・」
 なんて言えば良いんだよ…。
「すごくえっちだ。」
 そう言って胃まで届くのではないかというほど下から突き上げられた。
 もう、すごく気持ち良くって声も出せなくなっていた。
 零の指が、僕の茂みを掻き分けてペニスを探り出し、根元を握り締める。
「駄目…イケ、なくなる…」
堰き止められたら頭が変になる。
「もっともっと狂わしてあげる…僕に溺れちゃいなよ。」
 間断無く突き上げられる。
 バックからされるより深いから…駄目…もう思考回路がショート寸前…。
「零…苛めないで…」
「好きだよ。」
「あぁっ…うわっ…」
 その時だった、身体の奥深くから今まで眠っていたものが突然暴れ出したような物凄い感覚が僕を襲った。
「あっあっ…零、もう駄目…止めて…壊れる…」
 僕のお願いなんか零はちっとも聞いてくれなくて、ひたすら動き続ける。
 気付いたら僕のペニスはぐったりと力を失っていた。
「なんで?どうして…あん・・・」
 再びさっきの感覚が襲ってくる。
「いやん…駄…」
 最後まで言葉を続けられずに僕は悲鳴をあげ、零の身体の上にばったりと倒れ込んだ。
 何に襲われたのか解らなかった。
 ただ肩でぜいぜいと息をするのが精一杯だった。
「イッた?」
 零が耳元で囁いた。
 ただ首を振るだけで声が出ない。
「凄いだろ?僕も初めての時、ドキドキした。心臓がイカレたのかと思うほどドキドキいってて身体はぐったり疲れてて…だけど物凄い充足感じゃないか?」
 零…誰の腕の中でそんなになったの?
 悔しい…。ちょっと睨んで見る。
「そんなに色っぽい目で見たって駄目。」
 そんな・・・つもり…無い…でも、眠い。
 零の声がどんどん遠くに遠ざかって、僕はいつしか夢の世界に誘われていた。



「そうなの?」
「そうらしい。」
 …あれが、女の子がいっつも体験している感覚なのか?
「あんなに…凄いの?」
「そうらしい…」
「僕…もういいかな。」
 射精する感覚の方が良いや…って言ったら駄目?
「ダーメ」
 とっても嬉しそうな顔をして零が僕の頬をつねる。
「一緒に居るのに、どうして裕二さんの心配ばっかりしているんだよ。」
 …あっ…ばれてた。
「ごめん…だって…パパって自分の事一人じゃ出来ないから心配で。」
 そうしたら零ったら今までどうしていたんだって突っ込んできた。
「だってだって…」
「大丈夫だよ。裕二さんはこんなに可愛い陸を一人作り上げているんだからさ、拓だってちゃんと可愛い子になるって。」
 僕は首を左右に振った。
「違うんだよ…本当はパパをとられるのが嫌なんだ…僕は思っていたよりファザコンだったんだよ…」
 言いたくなかったのに、零には知られたくなかったのに。
「欲張り。」
「うん…零と一緒に居るのに、パパのこと考えててごめんね。でも大事なんだパパのこと。」
 零の腕が僕の身体をしっかりと抱き締めた。
「駄目…僕だけ見ていなさい。」
 そっと唇が僕の顔の位置まで下りてきた。
「この唇も、瞳も、頬も…僕のもの。当然心の中も、頭の中も僕のもの。他の誰だって入室禁止。」
 ニッコリ笑ってくちづけられた。
 そっか…考えなければいいのか…じゃあ最後に、これを最後にもう考えないね。
 どうかパパが幸せになりますように…



 僕達は実紅ちゃんが病院を退院して1ヶ月後に会いに行った。
 パパはとっても幸せそうに笑っていた。
 実紅ちゃんも可愛くて仕方ないという表情で拓を見つめていた。
 ママと涼さんが毎日会いに来るらしい。
 …僕ももっと会いに来たくなってしまった、だってとっても可愛いから。
 赤ん坊って可愛い、無条件で可愛い。
 ほんの少しパパが羨ましいって思って、零はいいな…って思って…だけどやっぱり零が好き。
 その夜、僕は再びあの物凄い感覚を味わうことになる。



「もうっ、零のえっちっ。」