隆弘くんの告白
「なぁ陸、今日家に寄ってかないか?」
 雑誌の取材が終わり、今日はこれで仕事が終わり…と言うとき、突然隆弘くんに誘われた。
「でも聖が待っているし…」
「零がいるじゃんか、たまには俺に付き合ってくれてもいいだろ?なにも四六時中零と一緒にいなきゃいけないわけじゃないだろう?」
 …実際、そうなんだけど…
「零ってそんなに独占欲強いわけ?」
「あぁ。」
 隆弘くんの背後から、零が断言した。
「そんなに陸が可愛い?」
「外に出したくないからな…隆弘みたいなのに取って食われるのがオチだ。」
 その声を聞いて、初ちゃんが振り向いた。
「なんか穏やかじゃない話してないか?」
「ちょっとね。じゃ、陸借りるからね、荷物は任せた。」
「ちょっ、隆弘くんっ、なに?ちょ…」
 強引に荷物を全て零に押し付けると、僕の腕を引っ張って隆弘くんの車に押し込まれた。
「絶対に今日中に帰るんだぞっ」
 零が外で叫んでいる。隆弘くんはそんな零にあかんべーとしてさっさと車を発進させてしまった。
「俺さ、決めたんだ。今日こそ陸を俺のモンにするんだ。」
 そう言って僕のことを、見た。


「この間さ、付き合ってた女に振られた。」
 部屋に着くなり、隆弘くんが言う。
「なんて言われたと思う?『ちゃんと前の恋に決着を着けてから次に行け』ってさ…まだ決着が着いてないんだってさ…」
 そう言うと僕を背後から抱きしめた。
「だけど、もう遅いんだ…その人は俺のこと絶対に見ることはないから…」
 僕の顔を自分の方に強引に向かせると、唇を重ねた。
 …哀しい、キスだった。…
「陸のかぁちゃんになっちゃったじゃん…実紅ちゃん…」
 実紅…ちゃん?
「隆弘くん、実紅ちゃんが好きだったの?」
「無理矢理かっさらって行きたい位好きだったんだけどな、零の妹だからそれは止めたよ、命が惜しいからさ。」
 寂しく、笑った。
「そこ、座って。今お茶入れるから。」
 リビングソファーを指差して、僕の身体を腕から逃した。
「陸は何で零が好きなんだ?」
 キッチンでコーヒーメーカーをセットして、シンクにカップを並べる。
「好きになるのに理由とかってあるの?」
 質問に質問で返す。
「俺には理由があるんだ…俺が彼女を好きになるのは必然だったんだ…」
 隆弘くんは僕にその理由を話し始めた。
「それは俺がまだ中学生だった…。あの頃ってさ、カッコいいものに憧れるじゃん、俺もそうだった。UHFチャンネルでやっていた音楽番組で見たんだけどさ、『WW(ダブルブィツー)』…って陸知ってる?インディーズのバンドでさ、派手な服装でやたらと動き回るバンドがいたんだよ…それに憧れて俺はドラムを始めたんだ。でもWWはメジャーデビューもせずに解散しちゃって、さて俺は何を目指そうかと思っていたときに、零の親父…涼さんのいたバンドの音に巡り合ったんだ。感動したな、あれには。俺が目指すのはこれだって思った。」
 隆弘くんはちょっと懐かしそうな瞳で空を見ていた。
「でもさ、全然音が違うんだよね。最初は友達と演っていたんだけどさ、段々イライラしてきたよ、あまりにも違いすぎて。で、そんな時にさ零と知り合ったんだよ…零は何でも出来るって知っていたか?」
 知っているよ、だって涼さんの所にはドラムセットもギターもベースもキーボードもパーカッションも何でも揃っているから、自然と手にするようになって出来るようになる。因みに僕も一通り出来るんだけどね。
「零と知り合うきっかけは実紅ちゃんなんだ。学園祭で僕らの演奏を聞いた彼女があまりにも酷いんで零に見てもらえって言ってくれたんだ。」
「零って今までどこかのバンドに所属したこと無いよね?」
「そうだよなぁ…中学ん時も遊んでいた記憶はあるけど、音楽やっていたって感じはなかったな。」
 僕は思わず身体がビクッと反応してしまった。隆弘くんは気付いただろうか?
「遊んでいたって?」
「色んな子と付き合っていたよ。俺見た事あるもん、零が旧校舎で男とセックスしているの。」
 言葉が続けられなかった。知っていたけど、聞いていたけど…やっぱり現実として受け入れるのはかなりしんどい。
「だからさ・・・陸、俺とエッチしない?」
「え?」
「俺、零に恨みがあるんだ。だから一番零が悔しがる方法で仕返しがしたい。それには陸と合意の上でセックスしたいんだ。」
「隆弘くん、話が途中だよ。」
「全部話したらセックスしてくれるのか?」
「…そんなに、連呼しなくたって…」
「恥ずかしいのか?毎晩零としてるんだろ?セ…」
「解ったからっ、状況によっては考えてもいい。」
 僕はとんでもない返事をしてしまっていた。
「そ、それで実紅ちゃんのことはどうなったの?」
 僕は慌てて話を元に修正した、僕のシャツに掛かっていた指は動きを止めて静かに離れた。
「それで?なんだったっけ?あ、そうそう、実紅ちゃんが涼さんの娘だったなんて知らなくてさ、だから当然零のことも知らなかったんだ。ある日偶然耳にしてびっくりしたんだからさ。憧れのバンドのボーカルだからなぁ…」
「その頃ってもう涼さん、解散してたよね?僕丁度ギターとかピアノを習っていたから。」
「うん、でもテレビで見ちゃったんだよ、「再結成して欲しいバンド」とかっていう企画だったかな?だからCD探しに店を回ったよ。初期の頃はレコードだったよ、かあちゃんのレコードプレイヤー借りたもんなぁ。」
 嬉しそうに隆弘くんが話す。
「でさ、再度学園祭で俺等のバンド、演奏したんだよ。いやぁ、恥かいたね、まだまだ全然駄目だった。でも、だから頑張れたのかもしれない。」
「零の練習って厳しいでしょ?あれって涼さんそのまんまなんだよ。」
「そうなんだ、なんかそれ聞いただけでうれしいなぁ、だって本当に憧れていたんだぜ。」
「うん、涼さんはカッコいい、今だってすっごくカッコいいもん。」
 零のパパ、涼さんは存在自体がカッコいい。で、全然気取っていなくて、哀しいときは本当にポロポロ泣いちゃうし、楽しいときには思いっきり笑うし、自然体で生きている人だ。
 それとは逆に、僕のパパはいつだって周囲の目を気にしている。どうしたら自分はカッコよく見られるかって思っている…本人はそんな気が無いようだけど、これは職業病じゃないかな?多分。
「俺、いつか零を自分のバンドのギターにって思っていたんだ。だって零のギターって物凄くうまいじゃん?だから零のギターに釣り合う音を出したいと必死で練習したよ。それに零は応えてくれた。相変わらず遊んでいたけどさ。」
 ドキッ…また心臓が跳ねる。
「で、どうして実紅ちゃんが…」
「決まってんじゃん、涼さんの、憧れの人の娘じゃん、好きにならないわけが無い。しかも零を紹介してくれたしさ、絶対に俺のこと好きだからだって、勘違いしたよ…本気で思っちゃったんだ…本当に馬鹿な子供だよ…彼女は…別に好きな人がいたんだ。」
 隆弘くんが、今までとは違う辛そうな表情をした。
「…零に…実紅ちゃんとの間を取り持って欲しいって…頼んだ。零は良いよって言ったのに…一度も2人で会う機会は無かったんだ…約束…したのに…」
 そんな約束していたんだ。
「それって…何時ごろのこと?」
「前のバンドから引っこ抜かれたとき。『実紅との間、とりもってやるからうちに来ないか?』って。」
「僕が入る前だね?」
「あれ、冗談だったのかな…」
 寂しそうに隆弘くんが俯いた。
「でも実紅ちゃんとは友達だったんでしょ?」
「ただのクラスメート。あんまり話はしなかったなぁ…俺が意識し過ぎていたからかな?だから誰かを間に立てたかったんだ。」
「ごめん、隆弘くん、それ間違っている。僕だったら正面からぶつかってきて欲しいな…実際実紅ちゃんはちゃんと僕に…」
 言いかけてまずいと悟った。
「何だよ、それ?」
 失言だったのは仕方ない、僕は実紅ちゃんに告白されたことを話した。
「なんだよ…陸の兄弟って変だよ。なんで皆血縁同士で好きになるんだよ…」
「実紅ちゃんも僕も知らなかったんだよ。幼なじみだと信じていた。」
「そっか…でも…」
「ん?」
「やらして?陸を抱きたい。」
「身代わりは嫌だよ。」
 隆弘くんが本気で言っていないことに気付いた。でもこれ以上ここに居たらいけないと悟った。
「僕、帰る。送ってよ。」
 隆弘くんは意外にも黙って車を出してくれた。
「その先を右に入ってくれる?」
 そこは野原の家の来客用駐車スペース。嫌がる隆弘くんを強引に連れ、僕は玄関を開けた。
「ただいま」
 声を掛けるとすぐに実紅ちゃんが出てきた。
「陸…おかえり…あら隆弘くん、珍しいね。」
 奥から泣き声が聞こえる、先月産まれたばかりの実路(みち)、女の子だ。
「ママみたいでしょ?子供ばっかり作ってて…」
 実紅ちゃんに以前のような陰りはない、幸せな若妻らしい華やぎがあった。
「会長」
 パパがそこにいた。
「隆弘〜頼むからその呼び方やめてくれよ〜」
 パパは事務所の経営者、ま、簡単に言えば資金調達係?
「裕二で良いって言っただろ〜」
 子供みたいなだだをこねている。
「パパ、それは無理だよ、だって僕のパパだって皆知っているんだもん。」
「陸の父親だと駄目なのか?」
「パパは友達のお父さん、名前で呼べる?」
「でも陸は涼のこと名前で呼んでるじゃないか」
「零だってパパのこと裕二さんって呼んでるでしょ、付き合い方が違うんだよ」
「陸って相変わらず偏屈じじいだな…」
 全く、自分が不利になると人を偏屈だとか言い出すんだから。
「隆弘くん、いっそのこと、パパって呼んだら?」
「あ、それいいかも。」
 実紅ちゃんが同調する。
「な…」
「そうしたら僕も外でそう呼べるしね。」
「む…」
 パパがむちゃくちゃ悩んでる。
「好きにしろ。」
 僕は拗ねているパパを階下へ連れ出した、実紅ちゃんと隆弘くんを二人っきり(実際には拓と実路が騒いでいたが連れ出すともっと騒ぎが大きくなるので…)にするために。
 この家の一階はパパが経営する芸能事務所がある、つまり僕らのマネージメントをしてくれている。今度はプロデュースも手がけるらしい、俳優さん女優さんにミュージシャンを何人か所属させ、大きくしていくみたいだ。
「ここ、近いうちに越すから。」
「うん、林さんに聞いた、ビルを借りたんだってね?」
「ワンフロアだよ、お前たちのお蔭でここがバレたからやりにくいそうだ。ま、大体何年もこんな所で無理だったんだよ。」
 昔、じいちゃんとばあちゃんがこの家に住んでいた頃、応接間として使っていた部屋をちょっと改装して使っている。因みに今じいちゃんとばあちゃんは裏の日当たりのいい場所に、パパが平屋を建ててあげて住んでいる。
「人も増えるんだ、タレントとスタッフも大勢出入りするしな。」
「パパは経営にまわるの?もう芝居はしないの?」
「ん?」
「いつか…僕がもっと自分の仕事に自信が持てて、もっと人間として一人前になったら…パパと競演したいな。」
 パパがびっくりした顔で僕を見た。
「本心か?」
「うん。その為には演技の勉強もしなきゃいけないけどね。」
 ポンポンってパパが僕の頭を撫でてくれた。


 僕はそのまま隆弘くんをマンションに連れて帰った。車はパパの所に預けっぱなしで。
「隆弘…ごめん。」
 僕が何も言わないうちに零が謝った。
「そうだった、実紅のこと…」
 隆弘くんがため息を一つ。
「零って、都合のいいときに思い出すんだな。今まで全然忘れていただろう?」
「うん」
 胸を張って答えることじゃないだろうに。
「実紅ちゃんにも謝られたよ。『あの頃言われても返事は同じだった』ってさ。俺はずーっとクラスメートのままだったらしい。」
 僕は背中からぎゅーって、隆弘くんを抱きしめた。
「辛いね、切ないね。ごめんね、僕が余計なことしたから…でもそうしないと隆弘くん、ずっと胸の奥に仕舞ったままだったんでしょう?それってもっと辛いよ…」
 零がそんな2人を一緒に抱きしめた。
「僕が代わりになってやろうか?」
 ニヤリ…不敵に笑った。
「隆弘、陸になにかしただろ?」
 何で?どうして?キスしかしていないよぉー。
「零っ、僕にとってキスは挨拶と同じで、零とするのは別でぇ…はっ…」
 墓穴を掘ったのは僕だった。


 その夜、客間で隆弘くんが寝ているのに…僕は零の下で散々喘がされ3回も果てたのだった…。


「陸、遅い〜」
 朝食の準備をしていたのは聖と隆弘くんだった。
「ごめん。」
「また夕べ零くんに泣かされたの?」
 ……………顔が熱い……………
「『零、もっと、ああんっ』」ってな。」
 ……………零〜……………
「全部聞こえた…」
「えっ!!」
「ごめん、またミカンが開けちゃったみたい。」
 これには零もびっくりしたらしく、ちょっと顔を赤らめた。
「本当に零と陸って出来てんだ…なんか今まで冗談だと思っていた。…俺が実紅ちゃんに熱上げていた頃、零は陸のこと想ってずっと悶々としていたんだろ?それじゃ仕方ないよな…」
「別に悶々となんかしていなかったよ、ボーイフレンドもガールフレンドもいたからさ…心が満たされなかっただけ…水を入れても入れてもこぼれてしまう水差しみたいに…あの時は忘れなきゃって必死で思っていたしね。…だから隆弘の気持ち、忘れてごめん。」
 零、あなたは酷い人だ…知っていたんでしょ?実紅ちゃんが僕のこと、好きだったこと。それなのに隆弘くんに頭を下げる。
 隆弘くんはとっても素敵な笑顔を僕たちにくれた。



「ああんっ…んぅ…はあっ…」
 今夜も僕は零に抱かれる。ベッドの端に腰掛ける零を恥かしげもなく跨ぎ、自ら昂ぶりをアナルへ導く…。
「ん…んぅ…」
 零のひんやりとした手が、僕の尻を包む。
「…陸…」
「あぁんっ…」
「全く、喘いでばっかりいるんだから…」
 ごめんね、零。僕、零とセックスすることばっかり考えていた。だって隆弘くんの手、とっても温かかったから…。
「誰にも、渡さないから。」
 うん、渡さないで。大好き、零…。
「あぁっ、あん、あぁっ、もう、駄目…イッちゃう…」
 僕は真っ白に弾けた…。


「隆弘が陸に手を出すわけがないのは分かっていたんだ。ただ、頭では分かっていてもなんか…気持ちが着いていかなくってさ。」
 まだ零のペニスは僕の中で力強く脈打っている。
 零が一度もイッていないのに僕は一人で二回も…なのでぐったりと肩で息をしながら、零の声を聞いていた。
「実紅のことだけどさ…あいつに一回、話したことは話したんだよ。だけどよく分からないって言われたからさ、考えといてくれって…ずっと考えさせっぱしだったんだよ。」
 …それを人は忘れていたって言うんじゃないのかな?
「隆弘、ずっと好きでいてくれたんだな…悪いことしたなぁ…。誰かいないかな、隆弘の好きそうな子。」
 人に探してもらうのって嫌だなァ…と思っていたら、
「隆弘って実はとっても恋愛に臆病なんだよ。この間まで付き合っていた子はさ、高校の後輩でずっと隆弘のことが好きだった子なんだ。自分からは言わないタイプなんだよ。だからもっと親身になってやらなきゃいけなかったんだよな…」
 かなり反省しているんだね。
「あんっ」
 突然、零が動きを再開した。
「もっと泣かしてあげる、もっともっとイッていいよ…」
耳元で囁かれ、僕はまた、精を開放した…。
「ごめん、僕も陸に告白していない…っていうか僕は陸が言ってくれなかったらずっと自分からは言わなかった。」
 息が上がっていて、言葉にならない。
「なんで?って顔しているな。そりぁそうだよ。僕には聖がいる。」
「…子供がいたら…恋しちゃいけないの?…パパには…僕がいるけど…実紅ちゃんと…結婚したよ…」
 なかなか息が整わない。
「陸が僕のこと好きになってくれるなんて自信が無かった。」
「…もういい…零、ちょうだい、もっと零が欲しいよぉ」
 僕は必死で腰を動かす、まだ零はイッていない。
「んっ…んっ…んっ…」
 僕の声だけが部屋の中に響く。
「もしも、本気で隆弘が陸のこと抱こうとしたら、どうするつもりだったのかな?」
「僕は抱かれたと思う…抱かれても良いと思っていた。だってそれで隆弘くんが零を許してくれるなら構わない。」
 零の手が僕の身体の動きを止めた。
「駄目。そんな風に考えないで欲しい。陸が身体を投げ出してまで隆弘に許してもらおうとは思わない。誰かが僕のために犠牲になるのは絶対にいやだ、ましてや陸がなんて絶対に考えられない。」
 両腕で僕の身体をしっかりと抱きしめ、動きを封じ込められた。
「うん…でも…僕にとってセックスってそんなに重要なことじゃない気がするんだ…そりぁ、誰でもいいってわけじゃないけど、肌を合わせることで分かり合える事だってあるんじゃないかな・・・だから僕は零に抱かれたんだからね。」
「なんか陸、変ったなぁ…」
「そうかな」
 僕、変わったのかなぁ…
「良く言えば強くなった。」
「悪く言えば?」
「すれてきた。」
 だけど零、僕は本当に零が欲しかったんだ。いつか話してあげるね、どれくらい僕が零のこと好きかってこと…。





 翌日。
「初、これ見てくんない?」
 隆弘くんが五線譜の書かれたノートを差し出した。
「昨日一日でこれだけ書いた。使えそうなのがあったらよろしく。」
「珍しいな、隆弘が曲かいてくるなんて。」
「詞も付いてるよ。」
 どれどれと、初ちゃんが見ている横で零が覗き込んでいる。
「これ、実紅だろ?あっ、こっちは初だ。これは高校のときの何だったっけ、ほら放送委員の…美影ちゃんだ。」
 どうやら主人公たちは知り合いばっかりらしい。
「俺の青春だよっ、悪いか。」
「気が多い青春だったんだ…」
 剛志くんがぽつりと呟く。
「俺が知っているだけでも、隆弘が付き合っていた女って…」
と、指を折りながら数えている…
「11人は知っている。」
「そ・そんなにいた?」
「田尻、金子、南雲、英田、猪瀬・・・」
「わ、わかったから、もう良いよ、ごめん、すみませんでした。」
 何故か隆弘くんが慌てている。
「…隆弘…僕は知らなかったよ、その子達のこと。」
 隆弘くんの背後で、零が腕組みして立っている。
「でも、実紅ちゃんのことは本気で・・・」
「陸・・・隆弘はこういう奴だよ。」
 そうみたいだね・・・。


 でも。


 いいなぁ〜


って思ったことは内緒。
 僕も一杯ガールフレンドやボーイフレンド、作っておけばよかったかなぁ…と、後悔している今日この頃。