初めての体験
「ねーねー、零くん。陸と初めてエッチした時ってどん感じだった?陸、痛がってた?」
 僕がお風呂に入っている間にこっそり聞きだそうとしたのか、リビングで零が定位置にしているソファの隣に移動するとびっくりするような質問を始めた。
 …僕は別に盗み聞きしようとした訳ではないけど、偶然聞こえる場所にいただけで…。
「それがさ…よく覚えていないんだ。」
 ま、聖に聞かせる話じゃないし、当然だね。
「ケチッ」
 聖ってば…。
「本当に、僕が聞きたいくらいなんだ。あの時はテンパッてて、全く記憶に無いんだ。」
 ガーン
 零…それが本当なら、僕的には超ショックなんですけど…。


 湯船に浸かりながら、僕はあの日のことを思い出していた。

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 あの日も零は輝いていた。
 スポットライトを浴びながら、滴る汗を拭う事もせず振り返る。
 絡まる視線に僕は瞳を伏せる。
 零に、僕の恋心を悟られないように…。
 好きで…本当に零のことが大好きで、ずっと隣に居たくて。
 どうしたら零の側にいられるのか必死で考えて出した結論がギターを武器にすることだった。
 パパに似て指が長かったから弦を押さえるのには好都合だった。音楽的才能なんて全く考えていなかったけど、零は僕のことを天才だって…今でも言ってくれる。
 コンサートの帰り道、ファンの女の子たちに囲まれている零を見るのはいつものことだったけれど、その日の僕は情緒不安定だったみたいで不安ばかりが胸に湧き上がってきていた。
 いつか、零に恋人が出来て僕に構ってくれなくなる日がやってくる。僕が成人したらもうこんな風に一緒に帰ることも出来なくなる。
 こんなことばかり考えていた。
 無理矢理、笑顔を作って向けた。でも零は…俯くだけで返事すらしてくれない。胸が…痛い。
 零には僕が負担なのかもしれない。離れたほうがいいのかもしれない。
 だけどもう少しだけ、側にいたい。この恋心を消せる勇気が出るその日まで…。
 なのに、
「僕、辞めようか…他の人探してくる。そのほうが…」
と、心にも無いことを口にしていた。
 関心を引きたい一心だ。代わりの人間なんて知らない。僕の代わりに零の側にいられる人なんて、僕が知っている訳がないのに。
 零が否定してくれて僕はちょっとだけ安心した。だけどやっぱり零に笑顔は見られなかった。
 あと何回こうして零と一緒に歩けるのだろう、あとどれくらいの時間が僕のために用意されているのだろう…。
 外気と車内の温度差に気が緩んだのか、悲観的な考えが再び頭を過ぎり、不覚にも僕は涙をこぼしていた。
「なに、どうしたんだよ。」
「ごめんね、零ちゃん、僕一生懸命頑張っているつもりなんだけど、ちっとも零ちゃんの力になれなくて。剛志くんにも、初ちゃんにも、隆弘くんにも、一杯迷惑かけてて。」
 そう言って誤魔化すしかなかった。だって、本当の理由なんて言えない、そう思っていたのに。
「誰も、陸に不満なんて抱いていないって。何泣いてるんだよ、男だろうが、泣くな。」
 そんな優しい言葉を掛けられて自分の女々しさに腹が立つ。
 零みたいになりたい。零は僕の憧れでもあった。
「じゃあ、僕を見て。」
 ふいに、言葉が口をついた。
「いつも僕から目を逸らして心の中は見せてくれない。僕に何も要求しない…嫌だよ。零ちゃんはパパじゃない、そんな保護者ばっかりいらない。…僕は1度だって零ちゃんを、お兄ちゃんだなんて思ったこと無い。だって一緒に暮らした事だってない、ずっと、ずっと…」
 一度あふれ出した感情は自分でコントロールすることが出来なかった。ダメだ、そんなこと言ったら零が困るだけなんだから…。
 案の定、零は困った顔をして僕を車から降りるように説得した。
 あまりにも惨めで、あまりにも情けなくって、僕は半分自棄だったんだ。
 いつかくる別れなら今日決着を付けてしまおう。
「零ちゃんの1番近くにいたいんだ、パパよりも、ママよりも零ちゃんが1番好き…側にいたい。」
 零の瞳から戸惑いの色が、消えたんだ。
「そのままじゃ…今のままの陸じゃ、帰れないぞ。」
 その時の僕の本音はとてもじゃないけど零には言えない。だって…。
『そこまでは望んでいない』からだ。
 零の気持ちを知りたかっただけ。
 だけど…零は本当は素直で純粋だったんだと、今なら分かる。
 考えてみたらあの時の零は今の僕より子供だったんだ。大きな責任を押し付けられて戸惑ってしまっても仕方の無いことだったんだよね。

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「いつまで入ってるんだ?のぼせるぞ。」
 零がバスルームを覗きに来た。
「やっぱり…早くあがりなさい。」
「なんで?気持ち良いのに。」
「赤い顔してる。」
 そう言いながら零が真っ赤な顔をしていた。
「あの日は僕が零に言ったな…って。」
「…うん。」
 零はさっき僕が盗み聞きしていたのを気づいていたんだろうな。
「…教えてあげようか?…実地で。」


 寝室で零が待っていた。
「おいで…と手を引いてベッドに腰掛けさせて、」
 言うと零は唇を重ねた。
「あっ…って可愛い声を出したんだ。身体中かちこちに強ばっていた…ここも。」
 零が触れたのは一番敏感な場所。
「…教えなくても良いみたいだね。」
 ちゃんと覚えているじゃないか。
「最初は軽くキスしただけだったのに堅くしてたからディープキスになったら爆発するかな?って考えた記憶がある。」
 エッチ…。
「キスして…押し倒されたんだよ。心の準備なんて言葉は零には存在してなかったなぁ。」
「チャンス到来…だからな。」
 確かに。
「なぜだかわからないけど左の胸ばかりイジられてたんだ、だからくすぐったくてたまらないから身体を捩ったら『陸はエッチな身体をしてる』って言われたんだ。覚えてる?」
 鳩が豆鉄砲食らったみたいな顔で否定した。
「身体中にキスしてくれたんだよ。」
 本当に優しく、僕の決心を促すみたいに零の愛情を感じて…少し嫉妬した。
 セックスするための前技なら他の人ともこんな風にするのかなって考えたから。
「零、僕は男だよ?―って聞いたら経験あるからと答えが返ってきてがっかりしたんだ。」
 零はあの日と同じように身体中にキスの嵐を降らせた。
「陸は初めてだから安心させようと思ったんだけど失敗だったね。」
 言いながらもキスが続く。あの日もそうだった。
 そしてゆっくり時間をかけてアヌスを舌で舐め解してくれた。それだけでイキそうなくらい時間を掛けてくれた。
 僕はペニスを自分以外の人の手でイカされたことはある(パパだ)けど、他の場所は本当に初めてだったんだ。声がかれる位喘いだ。
「あぁっん…」
「今のはホントに感じたんだろ?」
 嬉しそうに言うから無視。
「一杯、零の名前を呼んだんだ…怖くて。」
「うん。怖いって呟いてた。だから早く恐怖を解いてやろうと思って、」
 行動に移った。
「うっ」
 気持ち悪かった、あの日は。
 排泄機能に異物が押し入ってくる感じは経験しないと分からないだろう。
 入り口は擦れて痛かった。
 だけど…。
 十回も保たなかったんだ、零が。
 僕は中で零が射精した瞬間、全身を快感が走り抜けた…けれども!うん!
 今夜は…相変わらずタフな零だけどね。
 このまま夜が明けるかもしれないな。


「で?結局陸はイッてないと?」
「うん。」
 初体験、僕は一方的に入れられて中出しされた。それだけ。
「…身体を、繋いだじゃないか。ま、それも僕の一方的な満足感か。」
 照れて零が言い訳を始めた。
「零が僕に気持ちを打ち明けられたのは今みたいな時間、夜明けだった。不安な気持ちのまま抱かれてた。」
「ごめん、マジでごめん。今抱かなかったら一生後悔すると思ってがっついてた気がする…覚えてないけど。つーか、最低だな、陸が痛いかどうかは聞いたのに気持ち良かったかって聞かないなんて…」
 んー、問題はもっと違う所にあるけど。
「でさ、ずっと聞きたかったんだけど…あの日、陸はしていいって、言った?なんかさ、『帰りたくない』がイコール『していい』ってことだと普通に解釈していた。」
「零はそうだったの?」
 無言で首を縦に振った。
「零…」
 零の身体を抱きしめた。
「零を誰にも取られたくないと思ったのは本当…だけどそれがセックスだとは…知らなかった。」
「え?だって裕二さんが…」
「パパが教えてくれたのは女の子の事。でも聞いてなかった。だって気持ち良すぎて頭に何も入ってこないんだもん。」
 中学生の男の子が気持ち良いことしているときに真剣に親の話なんか聞いてないよ…親にしてもらうこともないだろうけど。
「聖に何て言うかな…」
「言わなくていい!」
「でもさ、知りたいことは教えてやりたいんだ…陸はもの凄く気持ち良かったみたいだって。」
 なんか違うってばぁ。
「ま、陸にもちゃんと教えてやったんだしね。」
 う。二の句が継げない。
「あ!だからか。」
「何が?」
「気持ち良くなるように仕込んでくれって陸が言った、あの意味がいまいち良く理解していなかったんだけど、射精できるようにしろってことだったんだ。」
「違…っ!」
 分かっていて零は言っている。
「ちゃんと最期の時まで責任をもって面倒みるから、隣に居て欲しい。」
 …そんなセリフ、ベッドの中で言うか?普通。
 でも。
「うん。」
 僕はそう答えていたんだ。


「ねーねー陸ぅ、零くんが陸に聞きなさいって言ったんだけど、」
 聖が新学期を翌日に控えた夜、パソコンの画面を眺めていた僕の後ろに立ち、意味深な調子で質問してきた。
「あのことなら言わない!」
 先に意思表示をしておかないと聖は諦めないからなぁ。
「北斗七星の見える時間…ダメなの?」
 確信犯め…。
「今の時期なら朝の5時頃なら見られるよ。」
 これ位の質問なら別に調べなくても答えられるんだけどね。
「朝の5時なら陸も寝てるよね?」
 …何が、言いたい?
「…うん。」
「そっか…じゃあデジカメ貸して、朝起きるから。」
「起こしてって言えば良いだろ?何遠慮してんだよ。」
 少しイライラしていた。
「遠慮じゃないよ、陸は仕事忙しいし、夜は零くんと一緒だから朝は眠いもんね。」
 結局そこにたどり着くのか?
「平気だよ?」
 多分、相当わざとらしい作り笑顔だったと思う。
「うん…じゃあ…ううん、違うんだ…。」
 聖が俯いて寂しそうに呟いた。
「陸と二人で見たいんだ。」
 ドキッとした。わずか十一歳で口説くテクニックを身につけていることを。それで思い出した、零も小学六年生で高校生と初体験をしたことを。血筋…なのだろうか?
「零は?一緒じゃなくていいの?」
 聖の瞳が一瞬失望の色に変わったがすぐに楽しそうに笑った。
「三人でもいいよ。」
 僕は気付いた。
 最近の僕は聖を過剰に意識している。このままではいつか絆されてしまう。
 好きなのは零なんだ。そんなことは分かっている。なのに…いつか聖を一人の男として意識している日がくるような予感がして怖いんだ。
 近づいてはいけない、そんな警報が頭の中に鳴り響いている。
「陸?」
 聖の手が僕の肩に触れた。
 ビクリと、驚きで身体が反応した。
 いけない、聖は自分の子供として育てていくと、言ったのに…。
 聖に好きだと告白されて、僕が動揺してどうするんだ?
 しっかりしろ!
「わかった、北斗七星と北極星、二人で見よう。」
 聖が輝くような笑顔を見せてくれたから、僕も笑えた。大丈夫、聖は聖だから。
「その前に、予習したいからプラネタリウムで位置を確認してもいい?」
「いいよ。」
「二人の寝室にあるんだよね?」
「オーディオルームに置いてある。」
 寝室には入って欲しくない。
「わあっ」
 突然、僕は大声を上げてしまった。
「陸?」
 背後から、いつもの様に聖が甘えて抱きついてきただけなのに。
「なんでもない。…聖、また背が伸びたね。」
「うん!そのうち零くんを追い越すからね。」
 …僕は眼中にないらしい。
「聖、そんなに急いで大きくならないでいいよ。」
 小さな聖が好きだなんて言えない。大人の聖に傾いてしまいそうな自分が怖いなんて言えない。
「急いでなんかないよ?陸が僕のこと気にしていないだけだもん。」
「何…で?」
「前みたいにいつだって僕のこと優先じゃなくなったってこと。…夾ちゃんとエッチしてから零くんに遠慮してない?」
 図星だ。
 夾ちゃんとセックスしたことを零が咎めてくれないから、僕はずっと零に対して後ろめたさだけを残している。
 勿論、零が好きなのは変わらない。
 でも何をしても僕を責めない零が…分からない。
「僕が零くんなら陸のことぐーで殴る。なんで待てないんだって怒る。そんなにセックスがしたいなら呼び出せばいいのに。あやちゃんはすぐに来るよ。」
 …
 え?
 あや…ちゃん?
 すぐに…来るよ?
「聖…あやちゃんに、何をした?」
 聖の顔が見られない。
「何も?」
 今、僕はショックを受けた。
「寂しいと言えばすぐに来るよ。」
 聖が…。
 ポケットから携帯電話を取り出す。
「あやちゃんに会う。」
 僕はそれだけ聖に言い残し、玄関を飛び出した。


「ごめん」
 あやちゃんは悲しそうに俯いた。
「聖くんの事、好きだけどそんな意味はありません。小学校五年生です。」
「そう、だよね。」
 僕も俯いてしまった。
「大学生の彼氏がいます。陸さんみたいにカッコいいわけじゃないけと優しいです。聖くんは可愛い。優しい。」
「…聖が、高校生なら…どうする?」
 あやちゃんは考えた。
「あり得るかもしれません。」
「そう、だよね。」
 思わず唇をかみしめていた。
「陸さん、心配しているように見えません。まるで…嫉妬しているみたい。いいな…聖くん。」
 嫉妬?
「彼氏が出来たって母に話したら、同じような反応したんです。陸さんは聖くんに対して母性愛を抱ける相手なんですね。」
 母性愛…。
「母性愛って男にもあるの?」
「勿論。陸さん学校の勉強は出来たみたいなのにそういうことは苦手なんですね。」
 そうか、そういうことなんだ。
「ありがとう、彩未ちゃん。」
 僕は急いで家路についた。


「聖、」
 ドアを開けるなり名を呼んだ。
「なあに?」
「四時半だって、一番見やすい時間。その時起こして上げる。」
「わーい、ありがとう!」
 そう言って互いにベッドに入った…のに。


「陸は、渡さない。」
 耳元で囁かれた。
 僕はそろそろ起きる時間だな…と思い時計に手を伸ばした、その瞬間腕を押さえられた。
「自分がどんな立場か、分からせてやらないとな。」
 何?なんなの?
 冷たい手のひらが身体をまさぐる。
 男性の生理現象としての勃起したペニスをしごかれ思わず声をあげた。
「ああん…」
「いい声だ、そそられる。」
 そんな風に言うのは零。
 背中に腕を回そうとして気付いた。
「ダメ…聖、約束…っ」
 しかし零の最大限に勃起したペニスを身体の奥深くで受け止めた途端頭の中は真っ白になった。
「んんっ…んっ」
「あん…あんあん」
 なんでいきなりセックスが始まったのかわからないまま、快楽を貪った。
「や、零…聖…」
「行為の最中に他の男の名前は呼ぶなっ」
 零が言っていることが理不尽に感じる。
「違っ…ぼ…い…な…て」
 切れ切れな言葉で伝える。
「母性愛?」
「彩未…ちゃん…が、そう言っ…んっ」
 僕は射精を伴わない快感を得て失神しそうな所を必死で持ちこたえた。
「あ、あ…んっん…」
 零は僕の中に性交の証を注ぎ込んだ。


「ごめん、ちょっと寝坊した。」
 4時45分、聖を起こしてテラスにでた。
 星座早見表を片手に空を見上げた。
 僕が小学生の時はパパが一緒に起きてくれた。
 零の時は誰だったのかな?
「聖。」
「ん?」
「北の空はこっちだよ?」
 パパに教えてもらった北極星。嬉しかった。
 僕が聖に好きと言われて動揺したのは、聖が僕を親として認めてくれない焦りと失望を抱いたためと、零に言われた。親の役割ではなく、恋の相手に指名されて動揺するなんてまだまだ修行が足りないな。
「陸、寒くない?」
 そう言って背中から抱きしめられた。
「あったかい。ありがとう。」
 えへへ、と聖の声が聞こえた。
「陸、大好き。」
「僕も聖が大好き。」
 大好きだから離れたくない。
「星は地球が自転しているから同じ所で待っててくれないぞ。」
 眠そうな表情で零がテラスに顔を出した。
「あ、エロオヤジ。」
 ゲシッ。
 聖は即座に殴られた。…僕に。
「零の悪口はダメ。聖にとってはただ一人のお父さんなんだからね?」
「…はい。」
 不承不承という感じだ。
「だけど僕が陸と約束してるの分かってて陸を抱いたじゃないか。」
 え?寝坊の原因知ってたの?
「聖、また?」
 もう…。
「あんな大きな声であんあん言ってたら聞こえるよ?」
 恥ずかしい。とっとと写真撮って寝よう…。
「聖、僕はなにがあっても邪魔するからな、肝に銘じておくように。」
「はーい。」
 なんだか聖は楽しそうに部屋へ消えていった。
 僕はデジタルカメラからSDカードを取り出し、パソコンを立ち上げ星空の画像を表示した。
「キレイに撮れてるな…え?」
 聖ってば…。
 パソコンのモニターに写し出されたのは、零の腕の中で寝ている僕らの画像だった。
「鍵、付けないとダメだな、新しい家は。」
 モニターを覗き込んだ零が呟いた。
「聖を星の沢山見える場所に連れていきたいな。」
 意外にも零がそう付け足して寝室に去っていった。
 僕は星の画像以外を全て取り出し、CDーRに落とすと、後はプリンターに印刷させて零の後を追った。


「おはよう。」
 聖は元気に起きてきた。今日から三学期が始まる。
「夕べの写真、プリントしておいたよ。」
「ありがとう。」
 僕の手から受け取ると一枚づつめくった。
「あー!陸の写真がない!」
「消したよ。」
「うー。」
 唸りながらも諦めたらしい。
「仕方ないか…。」
 そう言ってポケットからなにやら出してきた。
「僕のコレクションだよ。」
 中は見るもおぞましい画像が山のようにあった。
「い、い、いつの間に…?」
「毎日!」
 零、いますぐ鍵を付けよう。
 これから鍵屋さんを呼んで、絶対に鍵をつけるっ。