006.中学時代の話
「友達としてでは無くて恋人として付き合うって、ダメ?」
 俺は意を決して侑に聞いた。
「ん。じゃ、ここから恋人ね。」
 まるでゲームでも始めるかのような返事だった。
 その頃の俺は、運動部に所属していたのでそこそこ体力もあったし、筋肉質な体つきだった。
 でも、俺の中で部活動よりも侑の存在の方が大きくなってしまい、段々休みがちになり、とうとう退部してしまった。
 一緒に図書館で勉強したり、ただしゃべりながら帰宅したりするのが楽しかった。
 中学から家まで帰るのに江ノ電に乗る。
 学校から駅、車内、最寄り駅…この行程が遊園地への道のりよりも楽しかった。
「睦城」
 ある日、侑がそれまで苗字で呼んでいたのに、名前で呼んだ。
 どんな心境の変化があったのだろう?
 それまでは頑なに拒んでいたのに。
「江ノ電の定期、いつまである?」
「月初まで」
「定期切れたら歩いていかないか?学校」
 家から学校まで、歩くと30分くらいある。
「いいよ、別に。」
 切通しを抜け、海岸に出て、観音のある寺を斜めに観て、文学館の前を通り、住宅街を行くと学校に出る。
 文学館の前から少し、人通りの少ない道を選んで行った。
 最初は普通に話しをしながら歩いていたが、段々話をせずにただ黙って手を繋いで歩いていた。
 帰り道にはわざと夕日が沈む時間を選んで海に出て、岩場の陰で初めてのキスをした。
 結局、通学はずっとこの経路を二人で歩いた。


 日曜日は毎回どこかの神社仏閣にいた。
 成り立ちを見たりしながら、なんとなく二人でいた。
 余談だがこの神社仏閣めぐりが夏休みの宿題に大いに役立ったことは言うまでもない。
 しかしある日、侑から次の日曜は自分のうちに来ないかと誘われた。
 最初のうちはゲームをしたり漫画を読んだりしていたが、侑がいきなり抱きしめてきた。
 キスをした。長い長い、キスをした。
 でもその時はそこまでだった。
 それから月に一回くらいペースで、互いの家に行った。


 初めて互いの性器に触れたのは、中三の夏休みだった。
 暑くて、悶々としていた。
「侑」
「ん?」
「…触りたい。」
「なにを?」
「侑の…あれ。」
 侑が、真っ赤になった。
 暫く俯いていたけど「いいよ。でも睦城のも触らせろよ。」と、囁いた。
 卒業までに三回、互いに触って、出した。