完全に寝不足だ。
夕べ、いちから順に整理してみた。
どうして俺はあいつを好きになったのか。
…そこは、分からない。
だけど、一緒につるむようになって、話は楽しいし、いつも側に居てくれるし、何より…すべてがタイプだったんだ。
性格も顔も声も。
俺が理想としている人間だったんだ。
どこかで刷り込みされていたわけではないと思うけど、中学の坂の上で会って、誰かじゃないけどビビビッときたんだよな。
別に、女が嫌いなわけじゃない。
大学時代は少し、女の子とも付き合ってみた。
けど、やっぱり俺の横にいて欲しいのは違うんだ。
頼られるんじゃなくて、肩を並べたかったんだ。と、そんなことを一晩中ぐるぐる考えていたら、朝方深く眠ってしまったらしく、起きたのはいつもより20分も遅かった。
実家暮らしで良かった。
通勤電車の中でまた考えてしまった。
昼休憩でも、接客の手が空いた時も、あいつが店の前を通った時も。
あいつ…なんであんなに変わったんだろう?
昔から容姿が綺麗だったけど、磨きがかかったかのようにぐっと…そうあか抜けた感じになった。
あんなにおしゃれだっただろうか?
そうか、中学時代はTシャツかトレーナーだったし、高校時代も大差なかった。そう言う俺も同レベル。
大学に入って色々友達とかと店を見て回ったりしてファッションを覚えた。
でもそれはごく普通の大学生の服装で。
今はスーツと制服を着る毎日で、平日は大学で着ていたものを着ている。
そうか、俺は服装であいつに惑わされていたんだ、そうだ。…と思いこもうとしている自分が一番馬鹿だと思い知ったが。
簡単だ、俺はずっと睦城が好きなんだ。
俺の中で妄想化していた睦城が現実となって現れて、二度目の恋をした。
それで、良いんだろ?侑。
よし、俺はもう一度睦城と付き合う。決めた。
『は?』
「だから、今度の休みは何時かって聞いてるの。」
『何で?』
「デートに誘ってるんだって。」
『え?』
「いちいち変な反応するなって。」
『ごめん。でも信じられなくて。』
「デートの時、ちゃんと話すから。」
そう、ちゃんと話して…大人の付き合いを、始めよう。
まずは、告白からだ。
「ごめん、まだそんな気になれない。」
「なん…で?」
「だって、俺、この間侑にコテンパンに振られたんだよ?なのにそれは間違いでした、やっぱり付き合いましょう…って言われて即答は出来ない。ましてや駅でオレと認識されずにいたなんてかなりのショックだ…」
え?
大誤算。
「まずは、俺の心の傷を癒してよ。返事はその後。」
「分かった。」
何となく、睦城にいいように手玉に取られた気がするけど…やっぱり睦城が好きだって、確信したから話に乗っかることにした。
これが一連の流れで、今現在俺は睦城の仕事の買い物に、横浜まで連れてこられている。
そう、睦城の足に使われている。
完全に睦城のペースだ。
だめだ、俺がまた、骨抜きにされる…。 |