024.ホントの夏休み
 侑の舌が歯列をかき分け入ってきた。
 俺の口腔内を侑の舌が這い回る。
 初めて、舌が差し込まれた。今までは触れるだけのキスだった。
 唇から離れた侑の唇が、顎へ首へ鎖骨へと降りて行く。
 淡白とか言いながら、前回とは違ってちゃんと前戯をしている。
 チロチロと右の乳首を吸う。噛んだり含んだり舐めたり。
 こそばゆくて、気持ちいい。
「あっ」
 思わず声が出たので慌てて両手で口を塞いだ。
 侑は左の乳首を指でもてあそぶ。両方の乳首を攻められ声が漏れまくる。
「あっ…んんっ」
「ここ、気持ちいい?」
「うん…」
 辛うじて答える。
 もう、ないものだと思っていた。侑が俺と身体を重ねることなどないと、思っていた。
「す…すむ…」
「ん、」
「うれ…しい」
 途端に、動きが止まった。
「侑?」
「ごめん。ずっと、我慢させていたのか…」
「ううん、我慢じゃない、悟ってたんだ。」
 なんだか仏みたいだな。
「そっか…悟らせてしまったのか…」
 俺の返事を待たず、侑はまた唇を重ねた、深く、深く。
 そして…。
 俺の下着を引きずり下ろすと、躊躇いもせずに昂りきったものを口に咥えた。
「あんっ」
 誰のモノだか判らないような声が自分の喉から転がり出た。
 温かい。
 温かい粘膜に包まれている。
 やがて、ゆっくりと上下に扱かれた。
「ああっ」
 今度は切ない声が出る。
 唇を小さく窄めて緩急をつけて動く。
「あっ、あっ…」
 動きに合わせて声が出る。
 裏筋に熱い湿った舌が這う。
「いやっ、ダメぇぇっ」
 侑がしてくれたことに感じ過ぎてしまう。
 今すぐに達しそうだ。
 唇に力が入り、スピードアップした。
「あぅっ…出ちゃうっ」
 言い終える前に、身体が硬直し仰け反り返って…イッた。
 ドロリと濃いモノが出た自覚がある。
 侑は最後の最後まで舐め取り、唇を離した。
「前は、手でしたよな?」
 ガクガクと頷く。
「声も出ないか。」
 そう言って笑う。
「俺はさ、あれからしてない。」
 え?あれから?
「マスかいたのも、挿入したのも、あれっきり。」
 おっと、いきなり核心を突かれると動揺する。
「だからさ、ネットで調べた。それとさ…漫画…ま、これもネットだけど。」
 言いながら俺の下着を…履かせてくれた?
 え?終わり?
 物凄く、その、ヤル気なんですけど。
 すると、
「あとで。」
と、耳元で囁かれた。
 俺はそんなに顔に出ていたのか?
 ゆるゆると起き上がり、昂った気持ちを抑え込む。
 あとでって?何時だよ?
 前戯と本番に間があるのかよ。
 そんな悶々とした気分の中、侑は立ち上がった。
「さてと、本物の飯に行くか。」
 なんだよ、俺は偽物かよ!と、思ったけど、侑は俺の出したモノを飲み込んでうがいをしようともせずそのままレストランに向かおうとしていたから、慌てて冷蔵庫から水のペットボトルを取り出して渡した。
「…こっから先は、酒の勢いを借りなきゃ、出来ない…ごめん。」
 ペットボトルを受け取り、一口飲み下した。



 俺も侑もビールと日本酒をかなり?んで、良い感じに酔っている。
 部屋を出る前に呑まなきゃ出来ないと言われてしまったからには、こっちも呑まなきゃ覚悟が決まらない。
 部屋に入ると、がっちりと鍵を掛けた。もう誰の邪魔も受け付けない、例え火災警報器が鳴っても、侑とシタい。
 侑の背にしがみつく。
「判ってる。」
 力強い返事が戻ってきた。
「俺も、シタい。」
 言うと、侑の荷物からポーチが出てきた。
 蓋を開けると中からコンドーム、潤滑剤、拡張器、ローション、何に使うのか判らない道具とありとあらゆるモノが出てきた。
「…俺より凄い…」
「あ、やっぱり?」
 俺も荷物からポーチを出す。
「ほら」
「あ」
と、小さく声を出したあと苦笑した。
「なんとなくだけどさ、俺の性欲は気持ちがないと出てこないみたい。」
 とりあえず、今日の時点では喜んで良いと思う。
 俺達は、長い夜を楽しむため、それぞれに浴衣を脱ぎ捨て裸になると、早々に抱き合った。



 ここから先は、二人だけの秘密



「気持ちいいね。」
「うん。」
 俺と侑は、深夜に部屋の露天風呂を使った。