「おはよ」
「…おはよう」
今まで別々の部屋で寝ていたが、旅行以来一緒の部屋で寝ている。
そして、時々だがセックスをしている。
今朝は、その、翌朝である。
侑は腹這いになって顔だけ俺の方に向けた。
「やっぱり、睦城は可愛い。」
ニコニコしながら言う。
「こんな図体でかくてなんの取り柄も無いけど?」
「可愛いがイヤなら愛らしい…つまり愛しいだな。」
「アバタもエクボってことか。」
「そんなもんか?」
そう言って笑い合えるのが嬉しい、。
「さて、今日も仕事だ。」
侑が布団から這い出した。
「後で畳むから置いといて。」
夕べは二人で寝たので寝具はを一組。
寝具を一組しか敷かないイコール今夜は良いよって合図。
でも侑がイヤならもう一組布団が敷いてあることもたまにはある。
ずっと好きだった男(ひと)。
一度は両思いになっていたと信じていた男(ひと)。
今度は絶対に手を離したくない、だから色んな手を尽くしてやっと振り向かせて繋ぎ止めた。
若干俺の方が掌の上で転がされている感がなきにしもあらず…なのだが。
それでもこうして夕べも求めてくれた。
だから…満足…なのだが…。
「ふぅ…」
気が付いたら三時間も休憩なしで作業していた。
侑との関係が今の状態になってから効率が物凄く良い。
そして客の入りも良くなった。
先日、女性誌に取り上げられたのも大きい。
けど。
侑が女性客に異常にウケている。
そんなことに不安を抱く俺はただのアホだと思う。
だから、掛けてみたくなるんだ。
布団を一組敷く。
そして枕をいつもと逆の位置に並べてみた。
これで侑は気付くだろうか?
「今夜は君が欲しい」
俺が侑を抱いてみたい。
これは贅沢なことだろうか?
「睦城」
「ん?」
「お前の気持ちはよーく、分かった。」
「うん」
「けど」
「けど?」
「…時間をくれないか?」
「いいよ。」
侑が何に気づいて何を待つのか、はっきりとは言わなかったけれども俺の思いは感じ取ってくれたのだと信じよう。
それに今まで散々待たせたし…ってその前5年間は俺が待っていたんだけどさ、勝手に。
大丈夫、俺たちは両想いになったんだから。
侑には言わないけれども、身体を重ねて、互いに快感を引きずり出すことが出来て初めて、両想いなんだと実感できた。
デートしたりキスしたり一緒に仕事したり、痛みを我慢してセックスしたり、それでも幸せを感じることは出来たけれども、あの感覚は好きだという気持ちがないと多分起きない快楽なんじゃないかと思うんだ。
きっと恋愛の達人に言わせたらそんなのは恋愛初期の幻覚だって言われそうだけど、それだって別に構わない。
俺が、求めていた幸せを感じることが出来たんだから。
もしも、どこか未来の時間で、侑と別れることがあっても、俺はあの感覚は忘れない。
「…き?睦城、」
「ん?」
「いいよ。」
「え?」
「したいんだろ、セックス。俺に入れたいんだろ?」
「いいの?」
「…優しく、しろよ?」
「頑張るっ」
今夜、俺は男になるっ。
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