| 衛利に相談へ行ったら、やはり両方と言われた。 ウチで上手く行ったら衛利の店も評判になるから一石二鳥だと喜んでいた。
 でも、実のところ衛利の店は既に人気になっていて、予約で一杯なのだ。
 そこへ俺が「塩パンを50個仕入れたい。」と、お願いした。
 ウチは睦城の制作時間を増やすために、定休日を増やした。
 観光客の居ない日は休みだ。
 なので、週末と祝日、それに金曜日と月曜日を開けている。
 つまり、通常は火曜日から木曜日は休みなのだ。
 衛利の店は日曜日と祝日は休みで、ウチは前日に仕入れる。
 「木曜日、金曜日は50個、土曜日は100個。月曜日の分は?」
 「流石に二日は取っておけないだろ?」
 「冷凍したら良いよ。美味い解凍方法を教えてやる。」
 そんなこんなで、サンドイッチ計画進行中。
 
 
 さて。
 サツマイモはどこで仕入れるか?
 昔は市場も安かったけど、今はテレビで宣伝してくれたのでそんなに安価では買えない。
 そんな時、ある人を思い出した。
 「こんにちは」
 訪れたのは、前の会社で一番に配属になった一号店だ。
 「あら、懐かしい人が来たよ。」
 それでも歓迎してくれて良かった。
 彼女たちの実家に、農業をやっている人が居たことを思い出したのだ。
 「サツマイモ?ないよ、それは。」
 「いえ、卸市場に連れて行って欲しいんです。」
 ここに顔を出せるのは、権利がないとダメなのである。
 「それより市場へ行って直接交渉すれば言いじゃない?あそこ、農家が出品しているし。」
 そうだった。
 やっぱり市場か…。
 俺は中学の同級生で、声を掛けたくなかったヤツに、声を掛けた。
 
 
 「悪かったわね、私がやってて。」
 実家がニンジンとサツマイモを作っていたのは、中学の時に睦城に告白をして来た女子だ。
 「店番するんだ?」
 「偶にね…坂ノ下の店、知ってる。」
 「ありがとう。」
 当たり障りのない会話をした。
 「多分大丈夫。」
 食材の手配は出来た。
 あとは、俺に作れるかどうかだ。
 夜にメールが来て、サツマイモは確保できた。
 カボチャは探してくれると言うことだったので、少し余裕が出来た。
 「美味しいポテサラって、時々レーズンとかパイナップルが入っているよね?」
 睦城がまた何やら難しいことを言い出したから、思わず身構えてしまったのだが、
 「それさぁ、ピクルスってどう思う?」
 と、提案してきた。
 少し、考える。
 「紀ノ国屋ならある、かな?」
 「ユニオンもあるんじゃない?」
 「なら東急ストアもあるだろ?」
 「全部回ってみよう。」
 「だな。」
 よし、なんとなく形が見えてきた。
 「あのさ、サツマイモサンドと、チャーシューサンドのニコイチはどうだろう?」
 「左貝くんち?」
 「うん」
 「ま、いつも世話になってるからな。」
 焼豚になにを合わせたら良いんだろう…。
 「茹でたもやし…か?」
 ラーメンみたいだな。
 「焼豚のタレを多めに?」
 「うん。」
 「やってみようか?試作品。」
 「だな。」
 俺は自転車を駆使して、鎌倉駅まで走った。
 
 
 思った通り、サツマイモのピクルスは良い感じだ。
 焼豚ともやしは水っぽい。
 「ならこっちはどうだ?」
 一緒にクレソン、サンチェ、貝割れを仕入れた。
 「クレソンは硬い、貝割れは辛い、サンチェ…かなぁ?」
 とは、睦城の意見。
 「俺は貝割れかなぁ?」
 さて、意見が割れた。
 そこで、急遽左貝くんを呼び出したところ…。
 「クレソン!」
 見事に三つに分かれた。
 さて、どうしたものか…。
 「衛利に聞けば?」
 …確かに。
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