| 夜。
 暴走族が走り去り、道路が一瞬静まりかえる瞬間、遠くで波音が聞こえる。
 「どうしてこの辺りはいつまでも暴走族がいるんだろ?」
 「走りやすいんじゃね?」
 俺たちはどちらからともなく手を?いで眠る。布団を二組み敷いて、手を?ぐ。
 「なんか、眠れないね」
 「来る?」
 少しの間があり、ゴソゴソと動く気配がした。
 掛け布団を持ち上げ、睦城が一つ布団に収まる。
 俺の身体にギュッと捕まり、胸に頭を載せる。
 小さく笑んだ。
 「なに?」
 「侑、ありがと。」
 睦城は、時々子供のように何かに怯える。
 「波の音、苦手なんだ。」
 俺たちの実家は住所が極楽寺。小学校を過ぎた場所にある。
 俺は更に奥で山の中だ。
 海は遠く波の音は聞こえない。
 「朝から鳩が鳴かないからいいよ。」
 「確かに。」
 山の中では、朝早くから鳩が低くグルッグッグーと鳴く。
 夏はセミもジリジリ鳴く。
 「あ、でも僕は波より鳩がいいかな?」
 「波より鳩より、」
 耳元に囁く。
 「…淡白じゃなかったの?」
 「俺に火を付ける着火剤が隣に居る。」
 「助平」
 「結構」
 睦城の脚に自分の脚を絡める。
 当然、当たる。
 「凄い、」
 存在感だね…と、耳元に囁く。
 睦城の手が、存在感を増したモノを握りしめた。
 「ちょっ…」
 緩急を付けて指が動く。
 「待て、待て待て、ちょっと、ヤバっ」
 手が、離れた。
 イク寸でで放置された。
 「むつ…」
 き…と言わせずに、キスされた。
 そこでまた、下半身に衝撃が走る。
 ダメだもう…。
 睦城は布団に潜り込み、パンパンに膨れ上がった俺のモノを、口に含んだ。
 「うあっぁぁっ」
 変な声が出て、出た。
 止めどなく、出た。
 「睦城の指、エロい。」
 「これは商売道具だからね。」
 緩急の付け方が絶妙なんだ。
 「また、してあげるから今夜は寝るよ。」
 「まっ、睦城がイッてない」
 「僕は…」
 見る間に顔が真っ赤になる。
 「いつも僕ばっかりだから、偶には良いじゃないか。」
 あ、そういうことね。
 「睦城、」
 攻守交代。
 素早く股の下に睦城の脚を挟み込み、覆い被さる。
 そのまま深く口付けた。
 …げっ、俺の…味?じゃん。
 「明日は、店を開ける日だよ?」
 さっきから睦城に負けっぱなしだ。
 「判ったよ、じゃあ、明日。」
 途端に街に静寂が訪れ、再び波音が耳に届いた。
 「…波の音が苦手なのは、きっとまだ生まれてくる前のことを思い出すのかな?侑に出会う前の、孤独だった僕に。」
 睦城が孤独?
 「別に、友達がいなかったわけじゃない。恋愛においてってこと。」
 「そんなに早くから自覚してたんだ。」
 「ううん、侑を見掛けた幼稚園の入園式から。」
 「それは、相当早いよ。」
 睦城の上から下り、横に寝転がる。
 睦城の身体を抱き寄せ、胸に抱く。
 「興奮して寝られそうにない。」
 「…」
 返事がない。
 やがて、規則正しい寝息が聞こえてきた。
 口の中、良いのかな?
 そんな不安を抱えたけれども、射精後の虚脱感も手伝い、何時しか微睡んでいた。
 夜も深くなり、表を走る車の数も減り、波音はずっと聞こえている。
 
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