直ぐ隣で、侑の息遣いが聞こえる。
僕は腕の中にすっぽり収まっている。
好きな仕事をして、好きな人と一緒に居て、好きな人に好きと言ってもらえて、これ以上に幸せなことがあるだろうか?
僕は侑しか好きになれないんだ、きっと。
そう思ったら顔がニヤけてしまった。
侑しか、好きになりたくないんだ。
目覚めたとき、やはり侑の腕の中にいる自分に安心する。
規則正しい寝息が、聞こえる。
僕は、侑の顔も好き。
伏せられた睫毛は長く、下瞼に影を落としている。
ぷっくりとした赤い唇は、僕の心を乱す。
何時までも眺めていられる。
やがて閉じられていた瞼が、ゆっくりと開いた。
「おはよ」
「おはよう」
侑の顔が近付いてきて、唇が重なる。
心の中で歯磨きしていないのに…と、思うけど、キスの魅力には勝てない。
「睦城のキスは、甘い。」
ニッコリ、笑う顔も、好き。
つまり、好きだから何でも好きなのだ。
だって、時々腹痛を起こすんだけど、その時の苦痛に歪む顔も好きなのだ。
(侑の腹痛は大抵冷たいものの取り過ぎ)
一年中、こんな風にイチャイチャしていたい。
けど、僕には仕事がある。
師匠の元に弟子入りしたからには、師匠の顔に泥を塗ることは出来ない。
色恋に血迷って、仕事を投げ出すなんて…。
んっ…
喉の奥に声を押し込め、必死に耐える。
古い家だから、あまり大きな声を出すと外に聞こえるはずだ。
あっ、
侑が繋がりを深める。
はぁっ、
ずるりと、引き抜かれる寸でまで腰を引く。
んっ、あっ、はぁっ…
鼻から荒い息が漏れる。
すると、
はぁはぁ
と、侑も激しい息遣いをしている。
侑が、僕との行為で感じてる。
そう思えて僕は興奮する。
「すげっ、中、ぎゅって…」
その声に更に収縮する。
「やばっ」
侑は僕の耳元で囁く。
風呂場から戻ると、侑は静かな寝息を立てていた。
「侑、お風呂どうする?」
「ん…」
寝ぼけたまま、僕の腕を取り、そのまま布団の中に引きずり込まれる。
当然、抵抗する理由はないから、僕はそのまま腕の中に収まる。
「好きだよ」
耳元にそっと囁く。
「ん…」
分かっているのかな?
ま、どっちでもいいか。
ここで同居を始めたころ、ぎこちなかった空気は皆無だ。
普通にキスして、互いに身体を求めて、二人ともに満ち足りて、眠る。
侑と二人で、生きている。
それが、僕の幸せ。
でも、このままでいいのか、少し不安になる日も、ある。
それが、今。
侑も、僕も、それぞれ母親から言われていることがあり、一蹴出来ずにいた。 |