| 「すす…む…侑っ」 自分の知らない奥深くまで穿たれ、しとどに濡らされ、どうしようもなく乱れ、啼いて、意識を手放した。
 
 「ん…」
 気持ち良くて目が覚めた。
 「侑?」
 「あ、気が付いた?ごめん、無理させて。」
 侑はバスルームで僕の身体を洗ってくれていた。
 「僕こそ、ごめん。凄く…善くて…」
 恥ずかしい。
 「わかってる。」
 侑の指が、尻を弄る。
 「全部出したと思うけど、念の為シャワーで流すよ?」
 「うん」
 この瞬間はとても恥ずかしい。
 でも、侑との性交渉は、したい。
 長い年月、思い描いてきた。
 侑に抱かれる。
 最初の時は、互いに慣れていなかったから性急に事を成して無理をした。
 今は互いに善くなるように、ゆっくりと溶かし、解す。
 「侑、僕さ、作品作りにも無理をしていたと思う。」
 「うん」
 侑の腕の中は、心地良い。
 バスルームを出て、バスタオルで身体を拭きながら、更に続けた。
 「牡丹、やってみる。」
 「うん」
 「僕の、なんてもう言わない。これ以上はないと言われるような、定番の牡丹を、作る。」
 「うん。睦城の思うままに、やれば良い。俺は睦城のサポーターでいるから。」
 「ありがとう」
 裸のまま、侑に抱き付く。
 「睦城は、魔性のオトコ…かもしれないな」
 「発動されるのは侑にだけなんだけどね。」
 
 「こんなに沢山?」
 「良く出来てると思う…って、自画自賛だね。」
 女性が使うものと考えるからややこしいのだ。定番って考えれば良い。
 銘々皿、豆皿、箸置き、匙、フォークそして箸。
 生活用品なら男女問わない。
 ここで、自分の掘りたい作品を作れば良い。
 作家としての出品作品はあくまでも定番を狙うんだ。
 
 狙いが的中する。
 
 出品した作品が新人賞を獲り、店の商品が売れ始めた。
 また、雑誌の取材があり、テレビで店を含めて紹介された。
 侑が嫌がるのでテレビの取材は侑が出る。なので侑のファンが集まる。
 正直、複雑だ。
 でも、もう迷いはない。
 最高の物を作るだけだ。
 師匠に言われた言葉が、今になって理解できた。
 
 0から11になるのは難しいけれど、10から11になるのは容易い。
 
 確かにそうだ、階段も一段ずつ上がれば簡単だけれど、三段ずつ上るのは大変だ。
 父と母にも、侑とのことは1からちゃんと伝えていこう。
 いつか、理解してくれるはずだ。
 決して道は険しくない、ただ遠いだけ。
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