「可愛いな、これ」
侑が可愛いと言うのは、僕だけだと思った。
「僕とどっちが可愛い?」
くだらないことを聞いてしまった。
「こっち」
侑が指差したのは、根付けの方だった。
ぷっと、侑が笑う。
「睦城って言うと思ってただろ?」
「そ」
そんなことないと言いかけて、変える。
「その子は僕の子だから。」
如何にも感が拭えない。
「なら、僕らの子か?」
「そうだね」
「それは可愛いわけだ。嫁に出すのが惜しい」
今度は大笑いした。
「だから、侑とのセックス、気持ちイイのかな?」
ふと、漏らした言葉に侑が頷いた。
「もっと、いっぱい愛し合おうな」
「うん」
私生活が充実していれば、良い作品も生まれてくる。
侑が手にしている根付けは雀だった。
「その子、あげるよ。スマホに付けておいて。店で付けておいてくれたら宣伝にもなる。」
侑の唇が僕に重なる。
「睦城、もっと肩の力を抜いて。そんなに真面目にならなくて良い。偶には冗談の一つも言ったら良いのに。」
「うん…でもさ」
僕は有る作品を侑に渡した。
矯めつ眇めつしていたが、「カエル?」と、聞いてきた。
「トビハゼ」
「顔がデカすぎ、身体が短すぎ。」
「そっか!」
「そんなことに悩んでたの?もっと早く聞いてくれれば良いのに…高校受験の時も聞いてくれれば良かったのに…」
僕たちがすれ違った、最初の地点。
「ごめん。どうしてあの時、相談しなかったのか今でも後悔してる。侑は僕に合わせてくれたんでしょ?」
「合わせたっていうか、睦城のお母さんに聞いたんだ、どこを受験するかって…睦城に聞けば良いのにな、あんなに近くに居たのに…」
僕は侑に抱き付いた。
「そんな昔のことなんかどうだって良いよ、今が幸せだから。」
「そうだよな、うん」
侑の手が、尻を撫でているのはこの際目を瞑ろう。
「店長、店長のスマホに付いてる根付けは先生が作ったの?」
常連客に聞かれている。
「うん、新作って言ってたよ。」
「いつ発売になるのかなぁ?私もお揃いで欲しい。」
侑とお揃い?
そうか、そんな下心があるのか。
…売上を考えるなら、そうするべきではない。でも、他の人と侑がお揃いなんて、我慢ならない。
雀は少し、デザインを変えよう。
…狭量な男でごめん。
「トビハゼとウーパールーパー?同じじゃない?」
あ、僕の鬼門。精進します…。
雀を止めてインコとかにしようかな。
店の声を聞くのも、僕には大切なことなんだけど、侑は入れてくれないから、階段から盗み聞き。
今日も店長はモテているようで、妬けます。
「あ、ごめん。俺は先約済みで。」
侑!?
やっぱり雀にしようっと。
僕はイソイソと仕事場に戻った。 |