| 毎日毎日、新型コロナウイルスのニュースで持ち切り。 観光客は一向に戻らない。
 今、ウチの店で売れているのは、テイクアウトのおにぎりとサンドイッチ。
 それとネット通販のお盆とティッシュケースが売れている。
 最近はティッシュを箱ではなく袋で購入してケースに入れるのが流行っているそうだ。
 ポケットティッシュケースも売れている。
 なのでぼちぼち仕事はある。
 でも前みたいに喫茶店が人でごった返すことはない。
 午後二時を過ぎると誰も訪れない。
 「睦城、明日は朝から充電しよ?」
 思い切り甘えた声で睦城を誘う。
 充電とはイチャイチャしようと言うことだ。
 「いいよ。僕も充電したいと思ってた。」
 睦城が積極的なので驚いた。
 でも、すっかり秋になっていたので、窓を開けていないのが大きな理由だろう。
 「今夜は鍋にしようか?」
 「うん」
 こんな会話が幸せだ。
 長谷駅近くに昔から営業している豆腐屋がある。ここで豆腐と豆乳を、肉屋では豚こまを購入してある。
 椎茸、シメジ、エリンギ、えのき、大根、卵はストックがあるから、豆乳鍋が出来る。
 ビールにするか、日本酒にするか悩む。
 
 「ん…」
 夕飯も風呂も済ませ、この後は充電タイムの前哨戦だ。
 布団の上で押し倒すと唇を重ね、歯列をこじ開けた。
 「っ…」
 喉の奥から音が漏れる。
 ゆっくり時間を掛けて、睦城を味わう。
 睦城の腕が、俺の腰を抱いた。
 「もっと…欲しい」
 今夜の睦城は積極的だ。
 「入れて、くれる?」
 「言わずもがな…だな」
 パジャマの隙間から手を突っ込み、睦城の素肌を弄る。
 「侑の掌、気持ちイイ」
 「もっと、気持ち良くなろ?」
 「ソーシャルディスタンスは?」
 「濃厚接触だな」
 テレビから流れてきている流行語を、次々と口に上らせるのは照れくささがあるから。
 何度身体を重ねても、何となく行為の始まりは照れくさい。
 やがて睦城が身体を開き、受け入れ、喘ぎ、我を忘れた頃にやっと羞恥が消える。
 「むつき、むつき」
 俺は何度も名を呼ぶ。
 「すすむっ、もっと、もっと乱して、僕を犯し尽くして」
 なんてエロティックなんだろう。
 そうか、好きな人が隠語を口にしたただけで、俺は勃起する。
 行為の途中でそうされると、射精する。
 本当に、俺は睦城にしか勃起しないし射精しない。
 睦城がいなかったら、俺は一生セックスしなくても生きていけそうだ。
 睦城の脚が俺の脚に絡み付く。
 「イッちゃった?」
 「いや。睦城はまだだろ?」
 「ん…もう少し…奥まで、きて?」
 待て、待て待て。
 危なくイクとこだった。
 「今夜の君は、物凄く扇情的だな」
 「ん…身体の奥が、疼くんだ。侑にいっぱいして欲しいって。」
 もしも、コロナに感染したら、なんと医師に言ったらいいのか、考えることにした。そうしないと睦城のリクエストに応えられそうもない。
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