061.充電式
 毎日毎日、新型コロナウイルスのニュースで持ち切り。
 観光客は一向に戻らない。
 今、ウチの店で売れているのは、テイクアウトのおにぎりとサンドイッチ。
 それとネット通販のお盆とティッシュケースが売れている。
 最近はティッシュを箱ではなく袋で購入してケースに入れるのが流行っているそうだ。
 ポケットティッシュケースも売れている。
 なのでぼちぼち仕事はある。
 でも前みたいに喫茶店が人でごった返すことはない。
 午後二時を過ぎると誰も訪れない。
「睦城、明日は朝から充電しよ?」
 思い切り甘えた声で睦城を誘う。
 充電とはイチャイチャしようと言うことだ。
「いいよ。僕も充電したいと思ってた。」
 睦城が積極的なので驚いた。
 でも、すっかり秋になっていたので、窓を開けていないのが大きな理由だろう。
「今夜は鍋にしようか?」
「うん」
 こんな会話が幸せだ。
 長谷駅近くに昔から営業している豆腐屋がある。ここで豆腐と豆乳を、肉屋では豚こまを購入してある。
 椎茸、シメジ、エリンギ、えのき、大根、卵はストックがあるから、豆乳鍋が出来る。
 ビールにするか、日本酒にするか悩む。

「ん…」
 夕飯も風呂も済ませ、この後は充電タイムの前哨戦だ。
 布団の上で押し倒すと唇を重ね、歯列をこじ開けた。
「っ…」
 喉の奥から音が漏れる。
 ゆっくり時間を掛けて、睦城を味わう。
 睦城の腕が、俺の腰を抱いた。
「もっと…欲しい」
 今夜の睦城は積極的だ。
「入れて、くれる?」
「言わずもがな…だな」
 パジャマの隙間から手を突っ込み、睦城の素肌を弄る。
「侑の掌、気持ちイイ」
「もっと、気持ち良くなろ?」
「ソーシャルディスタンスは?」
「濃厚接触だな」
 テレビから流れてきている流行語を、次々と口に上らせるのは照れくささがあるから。
 何度身体を重ねても、何となく行為の始まりは照れくさい。
 やがて睦城が身体を開き、受け入れ、喘ぎ、我を忘れた頃にやっと羞恥が消える。
「むつき、むつき」
 俺は何度も名を呼ぶ。
「すすむっ、もっと、もっと乱して、僕を犯し尽くして」
 なんてエロティックなんだろう。
 そうか、好きな人が隠語を口にしたただけで、俺は勃起する。
 行為の途中でそうされると、射精する。
 本当に、俺は睦城にしか勃起しないし射精しない。
 睦城がいなかったら、俺は一生セックスしなくても生きていけそうだ。
 睦城の脚が俺の脚に絡み付く。
「イッちゃった?」
「いや。睦城はまだだろ?」
「ん…もう少し…奥まで、きて?」
 待て、待て待て。
 危なくイクとこだった。
「今夜の君は、物凄く扇情的だな」
「ん…身体の奥が、疼くんだ。侑にいっぱいして欲しいって。」
 もしも、コロナに感染したら、なんと医師に言ったらいいのか、考えることにした。そうしないと睦城のリクエストに応えられそうもない。