| 今夜の僕は、ヘンだ。 侑が欲しくて欲しくて仕方ない。
 中を穿たれ、思い切り突かれ、内壁を擦って欲しい。
 まるで盛りの付いた犬みたいだ。
 中をしとどに濡らして欲しいと思っている。
 どうしたんだろう?
 「す…すす、む」
 僕は、きっと侑に対して言葉が足りないんだろう。
 くだらないことは話すのに、大事なことは口を噤んでしまう。
 「中を…擦って?」
 途端に口付けられた。
 「可愛いな、睦城は。」
 そう言うと、僕が根を上げるまで、侑は腰を振り続けた。
 
 「侑、衛利に電話してこようか?腰が立たないって。」
 「腰が立たないは余計…でもこれじゃ、行けない。」
 「僕が取りに行っても良いけど、店は?」
 「それはバイトに任せれば平気だ。」
 「ごめん、僕が我が儘言ったから…」
 夕べ、いつまでも強請ったから、侑の腰痛が出た。
 今日が店を開く日だって、忘れていた。
 「いいよ、あんなに可愛い睦城は久し振りだったから。」
 俯くしかなかった。
 僕は、本当に昔から侑を欲することしかしていない。少しは我慢を覚えたら良いのにと思うけど、侑に関しては一歩も引けない。
 「侑の腰が良くなったら、またしてね。」
 …悪魔だな。
 
 「侑、ちょっと来て。」
 夕飯後、僕は侑を庭へ呼んだ。
 「今日ね、御成通りで見付けたんだ。」
 線香花火。
 「少し時期外れだけど、やろう?」
 ロウソクに火を点け、線香花火に点火する。
 「ニンジンの葉っぱみたいだ。」
 笑いながら侑が言う。
 「情緒がないな」
 「冬の入り口に立っているのに、花火をやっている大の大人もヘンだろうが。」
 「昔、出来なかったから。」
 侑は覚えているだろうか?
 「鎌倉の花火大会のこと?」
 「うん」
 良かった。
 「二人だけの花火大会がしたいって。」
 「うん」
 「本当に二人きりだ」
 侑の手が、僕の頭を撫でた。
 「また、欲しくなる。」
 「君のためなら何度だって…と、言いたいところだけど3日待って」
 僕に何も言わせないつもりだろう、素早く唇が塞がれた。
 
 それから数年後、侑は鎌倉花火大会のスポンサーになって僕のために大きな花火を打ち上げてくれた。
 …十発の最後の花火がハートにMの文字だったのが、恥ずかしかったけどな。
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