「俺が言った通りに手を動かせば、料理は作れる」
…見栄をはって偉そうに言ってしまった。
国から調理師の資格を得たが、まだまだ新米だ。
でも。
左貝よりは良いだろうと自負している。
「包丁は使えるよな?なら、ジャガイモとニンジンとタマネギを同じ大きさに切る。わかった?」
左貝が不承不承という感じで「わかる」と、返事した。
「やってみて。」
「う、うん」
覚束無い手付きでゆっくりと切る。
優に十五分は掛かっただろうか?
「豚肉も同じ大きさに切る…って、それはスライサーで切れるだろ?店で。」
左貝の実家は肉屋だ。焼豚で有名だが、本職は肉屋だ。
当然肉を切るスライサーがある。
「うん」
「それを用意する、いい?」
「うん」
「今日は用意してあるから、これを使おう。」
冷蔵庫に予め入れておいた。
「部位は肩ロースがベスト。」
その後、延々とカレーの作り方を伝授した。
「いい匂いだね。」
丁度出来上がった頃、睦城が匂いを嗅ぎ付けて二階から降りてきた。
「全部左貝が作った。」
「すごーい!僕は出来ない。」
すると、少し嬉しそうに笑った。
「明日は卵焼きの焼き方を教える。パンは届けるから、サンドイッチは作れるだろう?」
「マーガリンと粒マスタードを塗って、卵焼きと豆苗とサニーレタスを挟む」
「そうそう」
海の家のメニューが決まった。
カレーとサンドイッチ。かき氷とドリンク。
うちの店が休みの日は応援に行く。
その日はメニューを追加する。
「侑は何を作るの?」
「うん、まだ決めかねているんだ。」
「オムライスは?」
「あ、いいね」
左貝が同調した。
「なら、そうする?それとドリンク類はオレンジとアップルなら手配できる。あと、俺からアイスティーは提供できるけど、行けない日はなくても平気か?作り置きしたくないんだ。」
紅茶に関してはこだわりがある。
「水出ししたら?」
睦城が余計なことを言う。
「値段に差を着けたらいいよ、プロ仕様と一般用って。」
「いいな、それ。」
左貝はまた、同調する。
「仕方ないな。」
こうして、海の家の準備は順調に進んだ。 |