| 「いらっしゃい」 和海が店頭で愛想を振り撒く。
 しかし、お客さんの目当ては、厨房に立つ美矢間くんだ。
 「お兄さんはお昼休憩何時から?」
 美矢間くんは気付かない。
 「おーい!侑!」
 「あ?俺?なに?」
 「休憩何時から?」
 「休憩はないよ、帰るから。店の支度があるしさ、」
 「侑!」
 「なんだよ、左貝?」
 また、和海と漫才が始まった。
 「無愛想過ぎないか?」
 「だって、納品に来て手伝わされている俺の身になってくれよ。今日は店が休みじゃないんだ。」
 「うちだって、死活問題だ」
 「俺が休みの日だけだと言ったよな?ムリしてオムライスなんか作るな」
 侑くんはオムライスを作り終えると、エプロンを投げ捨てて帰っていった。
 「和海、ムリはいけない」
 「うーん、仕方ないかぁ」
 和海はメニューを差し替える。
 
 カレーライス
 サンドイッチ
 スパゲッティナポリタン
 焼そば
 ホットドッグ
 
 の五つだ。
 カレーライスは昨夜仕込んで一時間に一回火を通している。
 サンドイッチは先ほど美矢間くんが届けてくれた。
 スパゲッティナポリタンは業務用スーパーで買った鍋で3分湯せんすればいいやつだ。
 焼そばは既に具は切ってある。そばを入れて炒めるだけだ。
 ホットドッグは、ソーセージを炒めてパンに挟む。
 パンも美矢間くんが納品してくれた。
 7月からずっとこの生活が続いていて、自分の店は休業状態だ。ま、問題ないけど。
 「誉輝、もう少ししたら高校生のバイトが来るから。」
 「高校生?」
 「親戚の子供。七里ヶ浜高校に通ってて、夏前は試験がないんだって、二期制だから。」
 「いまの高校は二期制なんだ」
 和海と付き合うようになって、いろいろな情報が流れてくる。
 サーフィンも高校生から始める子が多いんだそうだ。
 「その高校生がサーファーなんだ」
 ほう。なら、また情報が仕入れられるかな。
 毎日が楽しいな。
 和海との毎日は本当に楽しい。
 全然違う職種なのに意外な共通点もあって、驚きもある。
 三条くんとも知り合えたしな。
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