081.エアコン、壊れる
「…んっ…ん」
 今夜は、睦城がやけに積極的に俺を求めてきた。
 だから俺も頑張った。


「え?」
「どうした?」
「エアコンが動かない」
「マジ?」
 いくらリモコン操作をしても動かないらしい。
 ダイニングの椅子を持ってきて、本体のリセットボタンを押してみた。
「どう?」
「うーん…ダメだなぁ」
 真夏日が続いているのに?
「仕方ない、今朝は店で朝飯を食うか」
「そうだね」
「戻ったら、機嫌直してくれないかなぁ」
 ボコッ
 ん?
「動けよ」
 なに?
「駄目か」
「駄目だろ」
 睦城が、機械相手に殴って説教した。かなり笑えるけど我慢した。
「石井んちが電気屋だろ?電話してみる。」
 俺は慌てて電話帳を探す。
「あった」
 電話をしたら直ぐに来てくれた。
「うーん、部品が足りない」と言って、取り寄せるから2日待てと言われた。
「2日、乗りきれるか?」
「うん」
 睦城が温湿度計を見詰めた。
「ムリだな」
 だろうな。
 少し、考えた。
「睦城、提案なんだけど…」
 俺は、ちょっと思いついたことを言ってみた。
「いいね、楽しそう」
 幸いにも平日に壊れてくれたので、店は閉めたままだ。
 なら、店に寝袋で寝たらキャンプみたいで楽しいのではないかと思ったのだ。
 昼間、実家に行って寝袋を回収してきた。
 高校時代に校外学習で使用した記憶があったのだ。
 姉の分と二つを手にして家に戻る。
 店でキャンプをするわけにもいかないので、晩飯はキャンプの定番、カレーを作って気分だけ味わった。
 寝袋にくるまって店の天井を眺めながら寝るのも、たまにはいいだろう。
 二日間を覚悟していたが石井が翌日には部品を片手に修理に来てくれた。
 「次に壊れたら買い替えを覚悟してくれ。すでに15年経過しているからガスがない。」そう言われて驚いた。
 今は10年が買い替えのタイミングらしい。
「家電の寿命が短くなっているんだね。」
 睦城も同じことを考えていたようだ。
「今度壊れたら、建て替えようか」
 二人で同時につぶやいた。