| 天気予報はあてにならない。 今日は曇りって言っていたのに、朝からずっと雨だ。
 フロントガラスをしとどに濡らし、更に降り続ける。
 「でも、車のなかだから濡れないし、僕は気にならないけどな。」
 睦城は外の景色を眺めながら、楽しそうに声を弾ませる。
 「睦城が楽しいなら何の問題もないよ。」とは言ったものの、前が見え難くなるほど降っている。
 「少し雨宿りしようか?」
 睦城が申し訳なさそうに提案してきた。
 「雨宿りなんかしたら、博物館に行けなくなるけど?」
 「そうじゃなくて!」
 「ごめん、冗談」
 「うん、わかってる」
 そんなやり取りをしながら無事に上野に辿り着いた。
 国立博物館、聖徳会館と昔のものがあるところをぐるぐると見て回った。
 ふと、睦城が歩みを止める。
 「どうした?」
 目の前には、各時代の名工の作品展のポスターが貼られていた。
 「二週間後か。また来よう。」
 「いいの?」
 「あたりまえだろ?」
 どうして睦城は甘えてくれないんだろう。
 「行きたいところがあるなら言いなさい。その方が、」続きを耳元で囁く。
 「誘惑されるより嬉しいかな」
 小声で言ったのに、意外と響いた。
 「バカ」
 嬉しそうに微笑んだ。
 
 外に出ると雨は上がっていたがどんよりと曇っていた。
 「また降りそうだね」
 「食事をして帰るか、家に帰ってゆっくり食べるか、どっちがいい?」
 「家がいいな」
 「了解」
 「なら、東京駅に寄って駅弁を買って帰ろう!」
 珍しく睦城から提案してきた。
 「そうだね、面白そう」
 東京駅に着くと地下駐車場に車を停めて、入場券で駅構内に入った。
 「侑」
 「ん?」
 改札を抜けて突然「今夜、する?」と、聞いてきた。
 「え?」
 また、ストレートだな。
 「なんとなく。」
 「いいよ」
 睦城が俯いてしまったから、表情は解らなかった。
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