枕に顔を埋めたまま右手を伸ばした…彼の身体がある…今までずっと求めていたもの…。
「謙一郎?」
彼の憂いを含んだ声音が僕を呼ぶ。
「温さん…本当にいいの?」
僕は彼にそう言った。
「なにが?」
彼は覆い被さるようにして僕の身体を抱き締めた。
「後悔…していない?」
「だからなにが?」
唇に塞がれた。
「こんなことしちゃう関係までになったこと?」
僕は頷いた。
「…先に行動を起こしたのは俺のほうだろうが…」
彼は小さく溜息をついた。
「ごめんなさい…でも…好きだから…」
もう一度抱き締められた。
「放したくないな…会社でもこうしていたいくらい…」
彼の気持ちに気付いたのは去年の忘年会。
うれしかった…だって僕は彼に憧れていた…いや恋していた。
彼が僕に振り向いてくれるなんて絶対に有り得ないと思って言わずにいた、ただの後輩でもいい、気の合う同僚でもいい…ただ傍にいたかった。
彼の気持ちに気付いたとき矢も盾もたまらず追いかけて…自分の気持ちをぶつけた。
「好きです」たった一言だったけど。
なのに彼は困惑した表情で首を振った…
「ごめん…」そう言って…。
彼の心を開かせるのは大変だった。
そのまま強引に僕は自分のアパートに彼を連れ込んだ、本当は押し倒そうかと思ったけど…やめた。
自分の気持ちを一晩中説明していた…多分僕は完全に酔いが覚めてはいなかったんだ。
朝、目覚まし時計が鳴った…彼は居なかった。何時の間にか僕は眠ってしまっていた。
会社に出勤すると彼は既にいた、きちんと着替えていつもの様にばっちりと決まっていた。
僕を見つけると…俯いた…
――嫌われた――ショックだった…
自分の机まで頭が真っ白のまま歩いて行った、そしていつもの様に一番上の引出しを開けると一枚の紙片が置いてあった。
『夕べはごめん…今夜改めてデートに誘っていいかな?』
なに?僕は顔を上げ彼を探した…もう事務所内に彼はいなかった。
その晩僕達は初めてキスをした…。
なかなか抱いてくれない彼に痺れを切らして何度迫った事か…
結局また酔った勢いでアパートに連れ込んだんだった…。
けたたましく目覚し時計が鳴った。僕は慌てて目を覚ます、だって…
「おはよ」
温さんの声。
「おはよう…ございます」
やっぱり照れくさい。
よかった…また目覚ましで起こされて、彼がいなかったらどうしようかって思ってしまった。
今でも彼はたまにしか僕を抱いてはくれない、でもいいんだ…好きだから。
(ちょっとだと話がずれているのは…じいちゃんの関係です、すみません)
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