| 「おはよ」かなり恥ずかしかったけど、僕は目を開けてみた。
 案の定温さんはめちゃくちゃ照れくさそうに瞳を伏せた、けど僕の身体を抱き締めてくれた。
 
 前日、僕らは週末のお決まりになっている居酒屋へ繰り出した・・・同僚達と一緒に。
 しかし昨夜に限って1人減り2人減り…気付いたら2人になっていた。
 なんとなく居づらい雰囲気になって、でも帰りたくなくてやたらと酒を注文していたら記憶喪失になるほど飲んでいた。
 で…勢いだった。
 僕のアパートまでタクシーでやっと辿り着いて、そのまま雪崩込んだ。
 お互いの名前を囁きあいながら…。
 
 「じいちゃん、起きてよー」
 今日も元気に?居眠りしているおじいちゃんに声を掛ける。
 「なんだ、今日はあっちゃんも一緒か…」
 片目で僕を見てそんなこと呟く。
 「じいちゃん花見に行こうよ、温さんが車出してくれるって。」
 「行かない」
 「あっさりと言ってくれるなぁ」
 じいちゃんがニヤニヤ笑う。
 「2人で行っといで。家には桜の木がある、見に行かなくてもいい。」
 そうなんだ、おじいちゃんの家はすごくでかいんだよ、で1年中花が
 咲き乱れている。八百屋は道楽なのかな?
 「じいちゃんと行きたかったのに…」
 「私は浮気はしないんだ」
 …浮気?…
 おじいちゃんと温さんが意味深な笑顔を作っていた。
 
 「ねぇ、なんで?僕分からなかった」
 「いいよ、分からなくって…謙一郎は僕のものだから。」
 なんか…温さん積極的になった?
 桜吹雪の舞い散る中、僕達はお互いの身体をしっかりと抱き締めあった。
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