何も予定の無い休日。1日中二人で何もしないでいる休日。
俺たちはいつのまにかそんな時間が持てるようになっていた。
明け方、ふと目覚めて隣りを見ると、可愛い顔をして雅之が眠っている。手を伸ばしかけて止める。彼はいつも仕事に追われていて忙しい。もう少し眠らせてあげよう。
しかし、俺の思いも虚しく、30分後に思いもよらない方法で雅之は目覚めた。
『ごめん。でも母親に呼び出されたら行かないわけにはいかないんだ。』
俺に向かって雅之が手を合わせる。
実家の母親から呼出の電話が入った。今日の午後から見合いをするから来いと言うのだ。
雅之は慌てて部屋を後にした。俺の胸の中は何故か重くて湿っている。
何十回目かの溜め息のあと、ふと、この恋を仕掛けたのは自分だと言うことに気付いた。
いつも必死で俺の後を着いてきてくれるから、雅之が自分のことを恋慕ってくれていると錯覚していた。どこまで行っても、追い掛けているのは自分の方ではないか?そう思ったらせつなくなり、やっぱり追い掛けているのが自分だと悟った。
紋付き袴で、緊張した面持ちの雅之は、決して俺の顔は見ない。
俺はそれでも食い入るように彼の表情一つ一つを脳裏に刻み込む。
彼の横には俺の知らない白く塗りたくった女が、勝ち誇ったように座っている。いや、彼女に俺の存在は明かされていないはず、というか、雅之は俺との日々を闇に葬るだろう。
後から後から、涙が溢れ、こぼれる。
「ただいま」
まだ夕方と呼ばれる時間。思った以上に早い帰宅。
「何泣いてるんだ?」
部屋に戻ってきた雅之が不思議そうに聞く。
「泣いてなんかいない。」
強がりの口調で返す。雅之の意地悪な笑顔。
「どんな娘だった?」
平静を装う。まさか自分で想像していただけで悲しくなって泣いていたとは言えない。あぁ、自分はなんて女々しいんだろうと、心の中でつぶやく。
「好きな人がいるんだ、だから見合いはしてない。」
「好き?」
「違うのか?」
「いや・・・」
そう、今はそれでもいい。いつか二人の答えを出そう。
「俺のこと、だよな?」
「他に誰か心当たりあるのか?」
「いや」
やっぱり、雅之の隣には小さくてかわいらしい女の子が似合う。ころころと明るく笑う・・・。
「まだ、今日の時間は残っているだろう?休日のし切り直しをしようぜ。」
スーツから着替えてティーシャツとジーンズ姿になった雅之が、照れくさそうに俺の顔を見る。
駄目だ…やっぱり駄目だ。
俺は雅之と離れられるだろうか?
雅之の本当の幸せを考えてあげられるだろうか?
若気の至りと、言えるだろうか?
Guuuuuuuuuu……
「克巳?腹減ってんのか?」
…そういえば今日は水すら口にしていない。
「うん…」
「全く。お前は俺がいないと飯も食わないのかっ。」
「だって…朝からご馳走食べそびれたから。」
その後、腹の虫が鳴くのを無視して、ご馳走にありついた。
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