「もう、大丈夫だから・・・降ろして」
そりゃあ責任の半分はお前のせいで・・・でももう半分は僕のせいだから。
そう言っていたのに広い背中にしがみ付いたら心地よくってそのまま寝たふりして顔を埋めていた。
荷物は全部宅配便で僕のアパートに送ったからもっかの”荷物”は僕だけで。
ねぇ、僕のどこが、好き?僕はまだ「好き」って言っていない。
「ごめん」
唇を押し付けたまま言った。
「ん?何か言った?」
”カムフラージュね”と左足首に巻いてある包帯の下が無性にこそばゆい。
「今夜は泊まってく?」
「いや・・・帰るわ、自制心に自信が無い。」
言いながら笑っている。
「あのさ・・・朝のことだけど・・・」
今朝目覚めたらすぐに外に連れ出された。(このおかげで悪化したんだ、腰痛が)
ちらちらと落ちてくる雪の粒の中をまだ誰もいないゲレンデを何も言わずにただひたすら歩き続けた。
膝が隠れるくらいまでの積雪の中を歩くのは僕のような都会育ちの人間には非常に困難でそれはお前も同じだったんだろうにただひたすら歩き続けた。
もうずっとこうしているのではないかと思うくらいただひたすら歩き続けた。
息も絶え絶えになって始めて振り向いた。
「言っただろ、二人で白銀の世界を見たいって。」
その場に腰を下して二人で雪に埋もれたまましばらくじっとしていた。
「リフトが、動き始めた」
「うん」
「戻ろう」
「あれは従業員が上に行くのに動かしているんだ」
確かにすぐに止まった。その時何か言っていたけど聞き取れなかったんだすごく小さな声で・・・何?
”荷物”は無事アパートに届けられて、重ねた唇にちょっと待ってと囁いた。
「欲しくないかも、しれないけど・・・でも流石にチョコは恥ずかしくて買えなかった」
今日はバレンタインだからね、好きな人に告白していい日なんだろ。
キーホルダーにここの合鍵をつけて・・・。
お前は唇の端をちょっとあげて「言わなきゃ良かった」って、何を?
翌日届いた荷物は3つ。
1つはお前のバックでもう1つは僕のバックで、そして・・・どんな顔でお前はこれを買ったんだ?
そう思ったとき玄関のドアが開いた。
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