「どうも、すみませんでした」
誰が見てもショックだったのは分かる、表情。
「武」
「ごめん…今は…」
奴は俺の方を見ずに席に戻り、始末書を書き始めた。
武が仕事で失敗をしたのは三度目、入社からではなくここ一週間で、だ。
何か動揺しているように思う。
『暫く…電話も…お互いの部屋を行き来するのも止めないか』
「どうして」
『俺たちの関係を疑っている人がいるらしい』
「誰だよ」
『兎に角、暫く…』
そう言って昨日の晩電話してきたのは武だった。
そんなことに動揺しているのか?
「武っ、飯食いに行くぞ」
俺は無理矢理外に連れ出した。
「止め…ろ…」
最後は力なく言う。
「嫌なのか?だったらやめる」
「嫌じゃ、ない。だから困るんだ。」
「どうして?」
「あること無いこと言われたら困るじゃないか」
「言わせればいい。」
「お前が俺を追っかけて来たおかま野郎だなんて言われて、我慢できない。」
ん?
「俺のことなら我慢する、だけどお前のこと言われたら俺は何も出来ない」
「ばーか」
なんだよ、嬉しいじゃないか。
「そんなこと気にして失敗続きだったのか?」
「?」
「気にすんなよ、俺は全然平気だからさ。」
「あのさ、仕事のミス…気づいていないようだけどお前の計算ミスだぜ」
「えっ!!」 |