=少しだけ=
 相変わらず、失敗が続いている…俺
 どうしてこんなに失敗ばかりなんだろう。


「横山」
 珍しく武の方から声を掛けてきた。
 最近は社内で話す機会が全然無かったので、なんだか背中がもぞもぞしてしまう。
「ん?」
「これ、やるよ」
 手渡されたのはパソコンソフトの解説書。
「それが使えるようになれば、少しはミスが減る。東京から僕がお前を呼んだんだ、責任を感じている。」
 武が、呼んだ?
「勝手の分からないところに来て、一人で心細くて…それで東京の取締役に無理言って阿井田さんの代わりに
横山をって頼んだ。ごめんな。」
 …お前、そういうことにしようっていうのか?
 本当は俺が押しかけたのに…
「なに言ってんだよ。」
 俺は照れるしかなかった。


「んっ…」
 夜、武の部屋でお前は真っ赤な顔をして俺からのキスを受け止める。
「昼間の、あれどういうことだよ。」
 …
 一瞬の沈黙
「僕は…男ウケするらしい。この間部長に誘われた。」
「何だって?」
 思わず俺は腰を浮かしかけた。
「何にも無かったってばっ…だからさ…やっぱりお前にそばにいて欲しいって、勝手だけど…」
「ばーか」
 俺はもう一度キスをした。
「そろそろ俺のものになる気になったか?」
 …
 再びの沈黙の後、
「少し…だけね。」