| 就業時間終了… 「今夜は帰るよ。」
 俺は不自然なくらいに武との直接的な繋がりを避けた。
 「横山…怒ってんのか?」
 首を左右に振る。
 「怒っていないよ、どうして?」
 「うん…」
 武は俺が言い出さないのを気にしている。
 正月の帰省から戻ってきてからずっと、俺は武を避けている。
 これ以上近づいたら、絶対にお前を傷つけてしまうからだ。
 「お前の好きな物、手に入ったのにな…」
 そう言って手がぐい飲みを持つ形になっている。
 「何所のだ?」
 「新潟」
 「銘柄だよ」
 「内緒。今夜、来るよな?」
 何故か今夜は強引だ。
 「新作映画のDVDを借りたんだよ、一緒に観ようと思ってさ。」
 「うーん…」
 こんなに食い下がってくる武は珍しい。
 「…もう…2週間経っているし…」
 …どこから?
 「話したいことがあるんだ。」
 話したい事…仕方が無い。
 
 
 武が手に入れたのは雪中梅。確かになかなか手に入らない。
 「ごめん、本当にごめん。」
 俺が酒瓶を縦にしたり横にしたりしていたら、突然武が謝っていた。何に謝っているのか…どうや
 ら大晦日のことらしい。
 「だから気にしていないって」
 「気にしていなかったらどうして何もしないんだよ」
 「お前が怖がるから…」
 「避けられたらもっと辛い」
 「我が侭だなぁ」
 はっきりと不快感を顔に出してしまった。
 「だって…醜態を晒したくなかったんだ。男が…みっともなく乱れるなんて…カッコ悪くて嫌だ。」
 …
 「ごめん、そうだったな。」
 そうだ、武は何時だってカッコ悪いのは嫌いだった。
 「でも、なんで乱れるって…」
 これ以上聞くのはアホだ。
 「サンキュ」
 俺は武を抱きしめた。
 「お前からしたっていいんだぜ…」
 
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