= もみじ =
 気持ちいいんだ。テルとキスするとすっごく気持ち良くて、血液が一点に集中する。
 それを悟られないように、少し体をずらして、抵抗を試みる。
 だけど…そろそろ限界かも。
「輝基、しよっ?」
 テルの首に腕を巻きつけたまま耳に直接囁く。
 テルは黙って下着を脱がしてくれる。しなくていいと、いつも言っているのに、だ。
 MAXの状態になっていた下半身を、テルは本当にいとおしげに口中に含んだ。
 駄目、声がでちゃう、でも気持ちいい…
「テル、あれさぁ、取ってよ」
 テルの肩がびくっと震えた。
「やっぱ、怖い?」
「こわいんとちゃうねん。」
 初めはこっちが怖がっていた。けど最近はテルが怖がっている気がする。
「雅治に抱かれたら、絶対に抱きたくなる。嫌がられるのはいやや。」
「好きだよ」
 俺は、テルの胸に顔を埋める。
「…もっと、好きになってしもうたら、どないすんねん?仕事中も移動中も雅治のことが頭
ん中ぐるぐるしたって、もうあかんねん…」
 テルの体を力いっぱい、抱き締めた。
「今の俺、そんな感じ」
 するとテルは俺の体を引き剥がして唇に唇をぶつけるように重ねた。
「あかん、雅治をこっちに落としたらあかん、思うねんけど、気持ちが着いてかへんねん。
許したってや。」
 俺はゴチャゴチャ言うテルの下着を強引に膝まで下ろした。
「あれ、使わなかったらどうなるんだ?」
 テルが一瞬怯んだ。
「し、しらんけど、多分血ぃの海…は大げさやけど、切れるやろな…」
「それだけ分かっているなら出しな」
 潤滑剤、テルが買ってきた。俺は実力行使に出た。
「お前ん中にこいつ突っ込んで気持ち良くなりたいんだ。…前立線がイイんだろ?一杯こ
すってやるよ!でも…」
 そう、俺が最近思っていること。
「その後、俺にもこれ、入れてくんない?」
「いややっ」
 …アイドルの名前がふいに聞こえた…すぐに違うことに気付いたが。
「わい、雅治、抱けないんや。」
 なんで?
「雅治はいつか女の子と結婚して普通の暮らしをして欲し思うてんや。わては通過点でえ
え。それだけで満足なんや。だからアナルセックスの受けはせんでええ。」
ボスッ
 俺はグーでテルの腹を思いっきり殴った。
「大馬鹿野郎!俺が…どんな気持ちでお前と付き合ってると思ってんだよっ!…好きだ
!好きなんだ…離れているのが嫌になる。自分に甲斐性があれば一緒に暮らそうと言
えるのに…」
 まだ続きがあったのに遮られた。
「んっ、んん〜」
 舌が中で蠢く。
 あ、又快感が走る。駄目、キスだけでイク。
 身体を引き剥がし肩で息をしていた。
「病気が怖いんだ」
 テルの告白、だった。
「アナルセックスって大腸菌が尿道から入って病気になることがあるんやろ?」
 え!そうなのか?
「もっとちゃんと調べたってからにせえへんか?」
 そういうといつものようにテルは「あれ」を両手に掬い取り二本纏めて握り込むと腰を
動かした。
 それだけで俺は気持ち良くて射精していた。
 冷静になってふと、気付いた。
「尿道からっていったら今のもまずくないか?」
 はたと、テルも気付いたようだ。
「ゴム、するか?」
 ぷぷっ
と、オレは吹き出してしまった。
「それじゃあ、セックスなんか誰もできないじゃないか」
 ふむ…と考え、ポンッと手を打つ。
「よし、明日。」
 テル、無理しなくていいのに。
 身体、繋がなくてもテルが好きだし、十分感じてる。
 目を閉じてキスをねだる。
 自分からキスを求めるようになったのだって、かなりの進歩だと思ったのに、セックスし
ようと思ったなんて、俺的にはかなり物凄いぞ。
 どこでどうして、こんなに好きになったんだろう?どうしてこいつが隣にいるのが当たり
前になったんだろう?
 多分、横山先輩と武さんの毒気に当たったんだ。
 職場に女の子がいないのがいけないんだ。
 四位に変態呼ばわりされたのがいけないんだ。
 いや、変態とは言ってないか。
 でも。
 テルに告白されてから俺ってば殆ど毎日こいつと一緒にいる。離れらんなくなってる。
 それを知ってか知らずか、テルは俺の身体を力強く抱き締めた。
 俺もテルの背中に腕を回した、力を込めた。
「…雅治…」
「あのさ…」
 二人同時に声を発したので、お互いに引っ込めてしまった。
「何や?」
「先に言えよ」
「雅治が先に言いや」
「・・・やっぱり、一緒に暮らさないか?もしかしたら俺たち、離れなきゃならないときがくるか
も知れないしさ。」
「何で?」
「異動の辞令が下りたら、一緒にいられなくなる。」
 テルの腕に力が篭る。
「俺は、辞める。雅治と離れるなら会社、辞めるわ。」
 俺は腕の中から逃れようと必死でもがいたが、テルが離してくれない。
 仕方なく諦める。
「そんなことで、人生棒に振るなよ。さっきお前言っていたじゃないか。俺が結婚した言っ
ていったら身を引くって。なのに異動になったら辞めるのか?」
「確かに、矛盾してる、わかってるんや。けどな、雅治に好かれてるっちゅう、確証があ
る間だけは側にいたいんや。」
「じゃあ、大丈夫だよ。俺は、お前だけだから。これから先、お前だけ・・・」
 そんな簡単に言い切っていいのか?
「そんなん、わからへんやんか。」
 心を見透かされたような言葉を、切なそうに言われると、やるせなくてどうしようもなくな
る。
「約束、する。」
 そう、俺は自分の気持ちにいまひとつ、自信がないんだ。だからなんだかんだ、いいわ
けをしている。
「やっぱ、輝基のこと、抱きたい。」
「・・・ええよ。」


 テルは、決して声を発しなかった。ただひたすら、苦痛に耐えるように、歯を食いしばり
、目をぎゅっと閉じ、表情はこわばっていた。
 『あれ』をテルに沢山塗りつける。
 『あれ』を自分自身にたっぷり塗りつける。
「入れる、よ?」
 相変わらず、堅く目を閉じたままだった。
 テルを仰向けに寝かせ、大きく足を開かせた。
 穂先を入り口にあてがう。少しだけ、力を入れてみる。テルの表情が硬くなる。
 ぬるり、と『あれ』の力で簡単に先端が埋まった。テルの表情は変らない。
 半分まで押し進める。
 テルと俺の間で、『テル』自身が小さく震えていた。
「痛いか?」
 目を閉じたまま、否定のサイン。
 右手で震えるテル自身を握り締め、軽く扱いてみる。ピクピクッと俺に応えた。
 一気に最後まで腰を進め全てを押し込んだ。
「全部、入ったよ?」
 テルは驚いたように、目を開けた。
「ほんまか?」
「見える?」
 テルは頭を持ち上げ、俺はたった今繋がった部分を、ぐいっと、持ち上げる。
「ほんまや…」
 ポロポロ…ふいに大粒の涙が零れた。
「わての中に、雅治が入っとう・・・動いて、気持ちよう、してくれへんか?」
 言われるままに、俺は抽挿を繰り返した。
 時々、テルの喉が「くぅっ」と鳴ったけど、やっぱり声は発しなかった。
 右手で扱き続けていたテル自身は、歓喜の涙を流していた。
 両手で枕を握り締め、必死で声を我慢しているテル。
 あまりにも健気で、その唇にむしゃぶりついた。
 上も、下も繋がってる・・・なんてスケベなことを考えてしまった。


 俺の掌でテル自身が叫び声を上げた瞬間、テルは真っ赤に紅葉した。


 こいつは、俺がいないとだめなんだ、だからあんなこと、言ったんだ。離れたくないから
、たとえ話をしたんだ。なんて、可愛いヤツなんだ・・・。
 離れなくていい方法を考えような。
 でも、まず最初は一緒に暮らすことから考えてくれよ。
 テルの寝顔にキスをして、俺も眠りに落ちた。