= 続・週刊誌 =
「はめられたな」
 今日、何度目かの取材依頼電話を切り、由弘はため息をついた。
 先日、週刊誌の若手経営陣がどうとかいう取材を受けた。新会社の宣伝になるからと社長から
頼まれて受けたけどなんか風向きが違う。
「俺たちは広告塔に使われたらしいな。仕事の実績じゃない。」
 かなり落ち込んだ顔で椅子に腰掛けると、右腕を伸ばして僕の左肩に手を乗せた。
「尚敬、セックスしたい。」
 驚いて立ち上がろうとした僕を、素早く抱き抱える。
「来週になったらここに岡部さんがくる。カツもテルも来る。そうしたら二度とこんなことできない。」
 言うと唇を重ねられた。背後で再び電話が鳴る。
「章介さんが来る…かもしれないし、さっきみたいに取材の…!」
 僕の抗議は拒絶された。
 ズボンのファスナーを下ろされ、ペニスを取り出される。やわやわと刺激されただけで身体全体
が、覚え込んだ快楽を目覚めさせ期待に膨らむ。
「やーらし。」
 耳元で囁かれる。
 自分の先走りを指で掬われアナルに塗り込められる。ペニスへの刺激とアナルの拡張にゆっく
りと時間を掛けた。
 ズボンとパンツを足から抜き取られ、同じく下半身をあらわにした由弘が手招きする。跨げという
ことか?
 羞恥より快楽を選んだ僕は由弘に向き合い、腰をゆっくりと落とした。
「ああんっ」
 アナルに由弘のペニスを迎え入れた。
「自分で動いてごらん。」
 抗議したけど無駄だった。
「あっあっあっ――」
 駄目だ。どうしてこんなになってしまうんだろう?嫌になるほど僕は淫乱だ。要求されれば素直に
応じる。ペニスはこれでもかというほど膨張し天を仰ぎながら、だらだらとだらしなく涎を垂らし、そ
の瞬間を待つ。
 いつの間にか由弘に突き上げられ喘いでいた。
「駄目、もう駄目、イクイクッ、助けてっ」
 僕の唇は訳の分からないことを紡ぎ出す。
「あっあっあっ、うぐぅ、や、や、や、イカせてぇ」
 ギリギリまで追い詰められ、追い立てられる。
「なお…たかっ」
「よしひろぉ」
 僕は必死で由弘の背中に腕を回してしがみついた。
「ちょっと待って」
 椅子の背に掛けたズボンのポケットからハンカチを取り出す。
「汚せないからな。」
 虚ろな意識の下、そうなのかと思いながら言われるままにされていた。
 奥深くを暴かれて、崩れ落ちたときだった。
「感心しないな」
戸口で声がした。
「いくら呼んでもでないから、来てみたらこんな有り様だなんて。困るね。」
 本当に困った顔だった。
「岡部…部長。」
「すいません、私が誘いました。なお…じゃない、武は断り切れなかっただけです。」
 由弘は下着を着けながら言い訳し、僕は脱いだ服を探してウロウロしていた。
「若いから、持て余すのはわかるが、職場だからね。誰が来るか分からないだろう?」
 やっと自分の下着を見付けて身に纏って、岡部さんを振り返った。
 スラックス(とても仕立がいいものなのでズボンとくくるのは申しわけない)の上からはっきりと分
かるほど、変化している。
「…わざと、です。岡部さんが来るかもしれないから。由弘、渡しません。」
 由弘は何故こんなに男にもてるんだ。腹が立つ。
「由弘は、僕のもんです。離しません。もう離れて暮らすこともしません。」
 由弘は僕が目を離すとすぐにふらふらと飛んでいく。いつでも側に置いて監視していないとこっ
ちの身が持たない。
 毎日身体を求められるより、毎日気をもんで生活するほうがどれほど辛いか、この男には絶対
に分からないんだ。
「武…一言だけ言っていいか?…ばーか…」
 低い、おなかに響く声がした。
 岡部さんが笑う。僕も笑った。由弘は…
「尚敬、前にも言ったけど高人とは一回しか寝てない。」
「一回あれば十分前科だ。」
 岡部さんはずっと笑ってる。
「武。横山はずっと君を想って苦しんでいた。大丈夫だ、他は浮気だから。」
 僕は…
「浮気する気持ちがわからない。どうして好きな人がいるのに浮気しようと思うのかが分からない
。」
 今度は由弘まで笑う。
「武はいい。確かにお前が惚れるだけの奴だ。」
「でしょ?」
 何が?どうして?
 …恋愛はよく分からないよ。
「で、週刊誌を見た。福永社長の考えは良く分かった。私は今日からここに来て、君たちと一緒に
頑張ろうと…思ったんだが、明日からにする。それまでに自分達がすべきこと、してきたことの後
始末をすることと…室内掃除をしておいてくれ。」
 言い置いて出て行った。