= 絶対!! =
「お前と俺は解りやすいよな。ちゃんと初めから男が好きだと公言してたじゃないか。武と勝浦
はほだされ派?」
「なんだよ、ほだされ派って。」
 また北海道から抜け出して来た熊…じゃない功一がアホなことを言い出した。
「俺はちゃんと口説いたぞ。後藤だってそうだ。」
「そういうのはほだしたと言うんじゃないか?」
 なんかしっくりこない。
「勝美は目覚めたのか?横山が口説いたのか?」
「俺が口説かれた。」
 低く唸る。
「柴田さんと田中さんが厄介だ。あの二人はどうしたいんだ?」
「あのなぁ、人のことはどうでもいいだろ?何が言いたい?」
 功一は黙り込んだ。
「ナカはあのままでいいんだ。柴田さんがいつまでも近くにいてくれれば安心して仕事に打ち込
める。柴田さんもナカがいれば心配ばかりして疲れるのに、いないと逆にストレスなんだ。」
「勝美のことなんだ。一週間口を利いてくれない。どうしたら機嫌がなおるのかな?」
「あほっ。知るわけないわ。」
 馬鹿馬鹿しい。
「四位は多分バイだ。どっちでもOKってやつ。女も抱ける、きっと。」
 功一の表情が泣きそうな位曇った。
「好きな女、出来たのかな?
 俺さ、本気なんだ。お前の時以上なんだ。」
「俺のことなんかからかい半分だったくせに。大体どっちも攻めじゃ無理だし。」
「お前なら、抱かれてもいい。」
 俺は席を立った。
「そんなこと言いにここへ来たんだ。だったら用はないや。さよなら。」
「ま…」
 振り向かず、歩き去った。
 俺は女々しい功一は嫌いだ。いつも堂々として意地悪なくらいキツイ一言を言うあいつが好き
だ。なのにいつも俺には弱音ばかり吐く。
 お前は思うとおりやれば良い。


「ばかやろっ」
 呟く程度にとどめた。
 わかっている。横山があんな態度で俺を突き放すときはまだ信頼してくれている。裏切りたくな
い。あいつの親友でありたい。
「そっか」
 口をついてしまい、慌てて口を押さえる。
 柴田さんと田中さんもきっとそういう関係を望んでいるんだ。先輩後輩で信頼しあえる関係。
「又ここですか?いい加減、手を焼かせないで貰えますか?身が持たない。」
 背後から声を掛けてきたのは勝美だった。
「何かあると横山先輩のところに駆け込むのは、フェアじゃないです。」
 それだけ言うと腰に腕を回し、きつく抱き締められた。
「あの人に嫉妬するなんて、思わなかった。」
 あの人?
「言い訳くらいしてください。」
「しない。俺は横山の親友だから。」
「親友…素敵ですね。」
「いつまで怒っている?」
「何故?」
「口調が違う。」
「照れ隠し。」
 次の瞬間、小さく「愛してる」の声が届いた。
「ん、ごめん」
「なんで功一が先に謝るの?悪いのは僕なのに。」
「勝美が横山に惚れてたのを引きずってるのは俺だ。自分もあいつに振られて何だか悔しくて
な。」
「僕は、感謝してる。」
 一度言葉を切ると大きく息を吸い込んだ。
「由弘さんと少しの間でも恋愛したから、功一の無謀な行為を許せた。そして受け入れることが
出来たんだ。功一も一回、由弘さんとセックスしたらいい。」
「嫌だってさ」
 声をあげて笑われた。
 信じて、いいんだ?迷わなくて、いいんだ?まだ時々不安になる。朝、君が居ないと涙が出る。
 一緒に歩いて、いいんだ?
「僕は絶対、功一を裏切らない、約束する。」