「やっちゃったのか?」
松永から突然電話が入り、これ又突然の告白であまりにも急な展開だったのでちょっと戸惑っている。
まず、整理してみよう。
福永は初めからゲイだと告白してきたから、自分もそうだと答えた。尚敬は僕がこっちにひっぱりこんだ。
「聞くけどさ、僕のことは知っていた?」
「福永が横山は絶対ゲイだと大学当時から言ってた。」
「そっか。松永もそうだったのか。」
なんだか同期全員ゲイかもしれない。
「社内恋愛は禁止だけど社内結婚は構わないぜ、うち。」
松永が困った声で返答する。
「身体の関係だけなんだ。」
だけ?
「もう一つ聞く。武士沢とセックスしたんだな?だけど好きじゃない。松永はバイ?」
「うーん、そう言われると難しい。嫌いじゃない。けど一生添い遂げたいほどではない。かといって今更女に
乗り換えるのは無理だからやっぱりゲイだな。」
ふむ。
「松永は恋したことないのか?誰かを思って胸が苦しくなって、顔も見られないほど夢中になって、声を聞
いただけで身体が熱くなる、そんな感じだけど。」
小さく「ある」と、返ってきた。
「武士沢は、だめなんだ?」
「分からない。だけど見ているとイライラする。田中先輩に何かといっちゃあ文句言って、二言目には正海さ
んは貴方には勿体無いとか言うんだ。そのくせ家に毎晩のようにやって来る。」
「今夜はいないのか?」
「同期会らしい。飲みに行った。」
「行ったって、そこから?」
「ああ。なぁ、どうしたらいい?」
困った。
「武士沢に会ってみる。それでいいかな?」
「嫌だ。お前に泣きついたみたいでかっこ悪い。」
そうか。
「何回、寝た?」
「…言わないと、駄目か?」
「いや、いいよ。」
その返答で分かる、一回じゃ、ないな。
「…いままで、ハッテン場で知り合った男と会っても互いに扱いて抜く程度だった。こんなに何度もしたことは
ないんだ。だから戸惑っている。したいって思うし、身体も反応するんだ。」
なんだ。
「簡単だ、『愛してる』って、言ったらいい。」
「…やっぱり、そうか…」
久し振りに電話の掛かってきた同期は、自分の悩みだけ話して、とっても落胆したまま、電話を切った。
入れ込み…レースのスタート前から興奮して落ち着かないこと。 |