= 勝浦特別 =
 仕事中に雅治の声聞いただけで夜のこと思い出した。雅治にばれたら怒られる。
「後藤、ちょっと顔貸してくれるか?」
 なんだ?呼び出しなんて愛の告白か?
 すごすご着いてったら、階段の裏手にある、ビル掃除のおばちゃんが荷物置き場にしてるんじ
ゃないかと思われる小部屋に連れ込まれた。
「何、想像してた?」
 そう言うといきなり、パンツを下ろされ、ハッキリ勃ち上がっているペニスを咥えてしゃぶり始めた。
「駄目や、出てまうて。」
 目が出してしまえと言っている。
 声も出さずに果てた。
「我慢出来ないんだったら言えよ。そばにいるんだから。」
「ちょっと待て?それはちゃうんやないか?職場でセックスすんのはあかんやろ?」
 しかし、雅治はしれっとした顔で言った。
「でも、もんもんとしているよりはいいと思うけどな。」
 にっこり笑って先に部屋を出た。
 何、考えてんだ?


「この間、あそこで専務と四位がしてたんだよ、」
 え?
「キス」
 あ、そっか。
「って俺らの行動とは関係あらへんやろ?」
 マンションに帰り着くなり雅治が昼間の言い訳を始めた。
「おかしいんだ…お前の声聞いただけで身体が疼くんだ。発情期なのかな?」
 雅治はセックスに関しては意外に淡白だ。そんなにしつこくもない。逆に僕の方が何度も雅治を
求めて睡眠時間を減らしている。
「しすぎなんか?だからモンモンとするんやろか?」
「あほっ」
むっ。
「大阪人にあほゆうたらあかんて何回ゆうたら覚えるんや、どあほっ」
 冗談混じりに語気を強めて言ってみた。
 すると、雅治は思いのほか沈んだ表情でスーツをハンガーに掛けた。
「なんだか、横山先輩や専務に当てられてばっかりで、自分を見失っている気がする。そりゃ、テル
のこと好きなのは変わらないけど、」
「待った」
 何だか途方も無いぐるぐるした世界に飛び込んでしまったんじゃないだろうか。
「雅治だけや。雅治はスペシャルやさかい、なんもきにせんでええ。自分の思うとおり…愛してくれ
ればええから。」
 くーっ、気障だな。
「あほっ」
「きーっ、だからっ…」
 延々とリピート…



勝浦特別・・・中山三回六日目に設置されている特別レース