= ブリンカー =
「あぁっ、あぁっ…」
 抽挿を繰り返す間、断続的に聞こえる苦しげだけれど喜色を含んだ声。
「コウ、苦しいのか?」
 フルフルと首を左右に振る。
「気持ち…イイ」
 掠れた声で答える。
「ごめん、また中に出る…」
 腰を最奥まで進めて出来るだけ中に出したい。
「あっ、あっ、あっ、あぁっ、あーっ」
ビュクッ
と跳ね、ビクンビクン震えながら武士沢のペニスは白濁液を吐き出した。
 はぁはぁと肩で息をしながら俺の顔を見つめている。
 呼吸が整うまでじっと見つめられていた。
「松永さん、どうして僕と寝るんですか?」
 『愛してるって言ってやれ』…この間横山に言われたけどなかなか言い出せないでいた一言。
 武士沢が可愛い、いつも横にいてくれたらと思う。でも…
「今、恋人がいないんだ。」
 なんて間抜けな回答だろう。
「でも!」
 素っ裸のまま抱きつかれちょっと動揺した。
「僕は…こんな体にされたんです、責任取ってください。」
「責任?」
「こんなの、普通じゃないです、僕は男なのに…女の子と寝てもたたないし、感じないんだ。」
 そのセリフでカーっと頭に血が上った。
「…いやだ…」
 暴れて抵抗する相手をねじ伏せ、両脚を大きく開かせると、まだ自分の放った精液で濡れているア
ナルに再びペニスを突き入れた。
「いやだ、止めて。もう松永さんとは別れるんだ、セックスしないんだ!」
 その言葉に弾かれ、更に動きを早くする。
「やぁ、やだぁ…んふんっ」
 徐々に声に艶が帯びてくる。
「あんっ、あん」
 ついに降参して喘ぎ始める。
 しかし、強く閉じた目尻から涙が溢れている。
「なんで、こだわる?僕の気持ちなんか関係ないだろう?互いに気持ち良ければ…」
「いやぁ、嫌なんだ!」
 腕を伸ばし、俺の体に巻きつけた。お蔭で動きを封じられる。
「こんなの、普通じゃないんです。だから…」
「はまったのはそっちだ」
「襲われて犯されたのが初めです」
 そうだ。苛ついて勢いで犯した。
「…好き…松永さんのセックス、好きなんです。」
 だから?…と問いたくなるのをとどめる。
 封じられた動きを再開し、又、最奥に射精した。


 手で顔を覆ってすすり泣いている男。昔こんな光景を一度体験した。
 だけど胸が痛い。
「いつも、奥に出されるから、指ではかきだせないんだ。」
 開いた目は憎しみを込めた光が放たれている。
「…風呂、行くぞ」
 腕を引いて無理やり風呂場に連れ込んだ。
 壁に両手をつかせ、尻に指を突っ込む。
「解らないんだ…」
そう声を掛けると
ピクン
と、武士沢の身体が跳ねる。
「入れたいという感情に捕らわれたのは久し振りすぎて溺れているんだと、そう思うようにしている。だ
けど」
 その先が言えない。
「まだ、僕と寝たいですか?」
「うん」
 即答していた。
「コウの泣き声を聞きたい。」
「悪趣味だ」
 でもその先は黙ってされるがままにすることで封じた。


「コンドーム着けるからさ、もう一回、いいかな?」
 ベッドに戻るなり節操がないのは解っている。
「そんなに僕としたいですか?」
「うん」
 また即答していた。
「松永さん、」
「光麻でいい」
 瞳が大きく見開かれた。
「光麻、その気持ち、僕は答えが解りました。」
「『愛してる』って言うんだろ?まだ確信がない」
「いいです、今はそれでいいです。…キスして。」
 ためらうことなく唇を重ねる。
 そして武士沢はゆっくりとベッドに身を沈め、脚を開いた。


ブリンカー…馬の視界を遮り正面だけを見えるようにしてレースに集中させる矯正馬具。