= 連帯率 =
 僕は、君の前ならどんなことでもやろうとしてしまう。それがどんなに無理難題でも、やろうと努
力してしまう。


「お願いだ、恥ずかしいんだ…」
「恥ずかしがるからやらせたいんじゃないか」
「意地悪だ」
「上等だ」
 由弘はニヤリと笑った。
 素っ裸のまま獣のように四つん這いにされ、冷蔵庫内のビールを取ってこいと命令された。
 ま、これも勝負(ババ抜きだけど)に負けたからなんだけど、なんだかとっても悔しい。
「今度はテレビゲームでリベンジだ!」
と言ったのに、あっさり無視されて由弘のペニスを咥えさせられた。
「そんなセクシーポーズで僕を誘っておいて、やらせないのは犯罪だ。」
 いや、セックスの方が犯罪じゃないか。
 大体セクシーポーズって女性に使う言葉だろう!
と、言いたいけれど口は塞がれていて全く話せない。
 毎晩、こんな事の繰り返し。
 それでも幸せだと思ってしまうから―
「ひっ」
 いきなり口腔から引き抜かれ、先ほどから執拗にメンタムをたっぷりと塗り込められたアナルに
、最大限まで腫れ上がったペニスを突き入れた。
「うひゃあ〜」
 メンタムがしみたらしい。しかし一度入れたものは出したくない主義だからうひゃうひゃいいなが
らも由弘は突き上げを止めなかった。
「このヒリヒリ感が癖になったらどうしようか?」
などと笑いながら言う。
 こうして一緒にいれば毎晩のように身体の関係を持つ。しかし少し離れると別の男と寝たりする。
「メンタムじゃなきゃ出来ない身体になったらどうする?」
 まだメンタムをいい続けている。
 先日、僕が北海道に三日間出張している間に、浮気をしたらしい。相手は多分、新人の松岡くん
だと思う。今回は勝美ちゃんの時みたいに思い切りはまったわけではないみたいだけどね。
「まただ―途中で考えごとするなんて、僕のこと愛してないだろ?」
 僕がNOと言わないことを見越して言う台詞。
「…かも、しれない。浮気の心配はもう沢山だからね。」
「え?浮気ってなんだよ?」
 由弘のペニスが僕の中で小さく萎んだ。
「真面目にわからない、いつのこと?」
「僕が出張に行ってた間。」
「あんときはテルとカツが来てたよ。何もない、本当だ。信じてよ…そりゃ、前科があるから偉そうな
こと言えない、でも…愛してる。」
 その台詞だけで喜ぶのは女の子だけだ。
「松岡くん、ちょっかい出しただろ?」
 一瞬、間があった。
「やっぱ―」
「違う、僕じゃない、誓うよ、絶対に浮気はしない、身体も、心も。だけど松岡のことは暫く黙認して
欲しい。」
 耳鳴りがして眩暈がした。
「もう、沢山だ…」
 愛してる―そんな言葉に騙され続けた。
 比護の翼の下、ぬくぬくと抱かれていようとしたのが間違いだった。
 そう、僕は男だから。闘いを求める生き物だから。
「…由弘、脚開けよ…」
 僕だって…やるときはやる!
「できるか?」
 意外にも由弘は、嬉しそうに声を掛けてきた。そういえば、岡部さんの時は確か抱かれたって
言ってた。
「なんだよ、なんで平気な顔して受け入れようとしているんだよ!」
「愛してんだよ!尚敬、本当だ。松岡のことは仕事のことだから、なにもしてないから。」
 息が出来なくなるほど強く抱き締められて頭がぼーっとした。
「何度も何度も傷つけてごめんな。でもいつでも尚敬のことを一番に考えているから、いつだって
尚敬最優先だから。」
 酸素を求める僕の肺に、二酸化炭素なんか流し込まれた。
 また、僕の負けみたいだ。


連帯率…馬及び騎手のレースに出て2着までに入った度数。