| 「栗、南瓜、さつま芋…は紅あずま?」 「紅あずまはともかく、南瓜は素揚げがいいな。代わりに松茸、奮発しよう!」
 やっぱりそうくるよな。
 「南瓜は素揚げね。あとは?」
 「茄子!焼き茄子!それからサンマ!あとはアスパラ使ったサラダ。」
 買い物リストが食材で埋まってゆく。
 僕は心の中にそっと人参を追加した。
 「サンマには大根がいるし、サラダにレタスも欲しいな。」
 今夜、久しぶりに福永くんと勝美ちゃんが遊びに来る。東京に連れ戻されたのだ。
 ついでに…と言ったらなんだけど勝浦くんと後藤くんも呼んで夕食会を開く。
 「松永と武士沢も帰ってたら良かったのにな。」
 二人はすっかり競馬の世界に染まってしまって、調教師になると言い出したのだが、色々調べてみるとどう
 やら中央競馬では無理らしい。
 それで今は地方競馬ならどうなのかとあれこれ苦戦しながら頑張っている。
 「親父に頼めば生産牧場くらい紹介してもらえるのにな。」
 由弘の実家は牛だけど牧場を経営している。
 「大体あの二人馬に乗れるのかな?」
 由弘は知らない。あの二人はトレーニングセンターで物凄く特訓を受けて、かなりの腕前らしい。
 「あっ」
 「人参もリストに入れたよ」
 「サンキュー」
 由弘は人参がだか知らないけど異常に好き。
 「デザートは梨と葡萄と林檎かな?」
 「うん」
 「味噌汁は豆腐とワカメでいいかな」
 「いいんじゃないかな」
 「福永…絶対に洋食が良いって言うだろうな」
 「だったら食わなきゃいい」
 …由弘は言い出したら絶対に実行する。
 「食欲の秋って言ったら…」
 そういうと腰に手を回してきた。
 「食べごろ…は過ぎてるなぁ…」
 はいはい。三十過ぎのおじさんですからね。
 「よっしゃっ、運動の秋に変更だ!」
 「変更しなくても、今夜はなし!!」
 「ええーっ」
 ピンポーン
 玄関で呼び鈴が鳴った。さてとどちらの二人組みが先に来たのかな?
 
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