= 復活 =
「お騒がせして申し訳けございませんでした」
 松永が頭を下げると同時に武士沢も頭を下げる。
「松永君は技術面を、武士沢君は営業を強化して欲しい。」
 岡部支社長が告げた。
「支社だと言ってもまだ完全に独立するには到っていないので君達には大いに期待している…と福永社長
からの伝言だ。
他の世界を見てきたからいろいろわが社の欠点も見えるだろう、どんどん意見が欲しい。」
 松永は深く頭を下げると「死んだ気になって頑張ります」と岡部さんに告げた。
「岡部支社長、僕の両親が怒鳴り込んでくるかもしれません…その時は、」
「あぁ、それなら平気」
 福永社長が上手く話してくれたらしい。
「男同士のトラブル解決なら任せなさい、わが社限定だけどな。」
とどんな話をしたのか解らない説明だった。
「ってーわけで行くぞ〜」
 武士沢はカツ―テルコンビに連れられて出掛けて行った。
「…これでいいのか?」
「この方がいいに決まっている。競馬社会は思った程開かれていないし…」少し口角を上げ「アイツ無理して
いたけど大型動物は苦手らしい。ここでやりたいこともあったらしいからな。」
「お前は?」
「出戻りなのに役員待遇なんて申し訳けなくて…」
「それはいいんじゃないか?この会社、社長しかいないから。カツもテルも武も自分も出向だからな。」
「そうなんだ」
「だから早い者勝ちだよ」
 松永が笑う。
「早く、福永社長の夢を叶えて次に進もう」
「次?」
「自分の夢を叶える」
 松永は困った顔をした
「夢は次々と生まれてくるからさ、新しい夢を見つければいい」
 一つ、瞬きをすると笑顔が戻る。
「そうだな。ここで、新しい夢を見つける」


 松永は松永なりにトレーニングセンターで色々な夢を見てきたらしい。それこそ、ここでは決して抱くことの
出来なかった自分の夢。
 でも、それよりもっと大切だと思えるものに巡り会ったから、夢は夢で終わらせた。
「今度、競馬観戦に行くか」
「あぁ、俺たちが世話していた馬も出るぞ。来年のクラッシックに向けて今頑張っているはずだ。」
 すっかり、競馬に詳しくなった松永はあたりがやわらかくなっていままでよりずっといい。