「やり直し」
横山の書く企画書は破天荒な内容だが詰めが甘い。
「考えはいいんだがな」
ニコッと笑うと武の側へ行く。
横山に押し出されるように席を立つと、私のところまでやってきて不承不承企画書を出す。
「固定観念に捕われすぎだ」
武は横山とは逆に細かい計算はいいのだが企画がつまらない。
そして二人は企画書を取り替える。
あの二人は自分達のいいところと悪いところをそれぞれ補っているベストカップルだと認めている。しかし傍から
見ているとなんだかママゴトのようにも思える。
「福永社長がいよいよゲーム機開発に着手しようということになって、技術者をあちこちから引き抜き始めている。
うちも秋には独立して社長が会長になって盛り立ててくれるはずだ。」
当初、ここは福永社長の息子で功一君が社長になるはずだった。しかし彼には別のプロジェクトを任せることと
なったので、私に白羽の矢が当たった。
そこに横山と武が加わったのは社長の一存だった。…横山と私の間で有ったことは知らないはずだ。
今は父親のように見られる。嶺南に子供が生まれ、自分が父親になったせいだろう。自分の子供は可愛い、横
山と武も可愛い。
二人が伸び伸びとやっていける環境を作ることが出来れば本望だ。彼らも既に中堅と言っていい年齢になったか
ら、いつまでも口出しは出来ない。だから見守ることしか出来ないけれど指南役として道しるべとなれたら良いと思
っている。
しかし、福永社長は私にもまだまだ第一線で走ることを望んでいるようだ。引退…とまでは言わないけれど野球
で言うコーチの座にはまだ座れないようだ。コーチ兼選手、と言ったところだろうか?
松永と武士沢が加わって後藤と勝浦もうかうかしていられない状況になったから、これからはもっと起爆剤を導
入しないといけないかな…安藤が適任か?社長に掛け合ってみるか。
…しかし、社長はこの新会社をどうするつもりなんだろう?同性カップルばっかりになってしまったよ。
何故か嶺南がはしゃいでいるけど。
天狗山…調教師が調教を監視する場所のこと。自厩舎の自慢話をすることから、天狗山、の名がついたといわれている。(JRAホームページより
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