= カウントダウン =
 ある日曜日。

 午前7時。
「田中のお兄ちゃん」
 裕幸の子供達は晴秋をこう呼ぶ。
「晴海君って美人だよね」
 君…と言いながら美人と褒めるのも珍しいが確かに正海に似て美人なのだ。
「軽井沢ってどんなところかなぁ」
 後部座席で旅行を楽しんでくれている裕幸の子供達に晴秋は安堵する。
 相変わらず柴田家と田中家は仲が良い。
「貸別荘だから家にいるときと同じでちゃんとご飯の支度は手伝ってよ。」
 光希が子供達に向かって言うと
「僕たちは晴海君を見ててあげるからお母さんと正海お姉さんで宜しく」
と切り替えしてきた。
 正海は『お姉さん』に気を良くして張り切っている。
「次のインターで替わるからな」
 裕幸は晴秋を気遣う。
 仕事もプライベートも順調で、二人はやっぱりこのままがいいと、本当にそう、思った。


 午前8時。
 光麻―幸太郎コンビ。
「オールドアルバムは僕です!」
 週末は決って馬場か馬房で揉めている。
 休みの日だけ、以前世話になった厩舎へ手伝いを兼ねて遊びに行く。
 「いつか、乗馬クラブを一緒にやろう」と約束している厩務員がいる。その日のためにみんなでせっ
せと資金を貯めているのだ。
 第一線で大活躍した馬以外は、余生が約束されていない。
 一軒でも多くの乗馬クラブが増えれば、一頭でも助かる馬がいる…というささやかな希望を求めて、
今日も頑張っている。


 正午。
「イ…ああっ…」
 平日の欲望を日曜に晴らすのは功一。
「も、ダメ…死にそう」
 朝目覚めてから4時間、功一は一度も勝美を離さない。
「お願い、1回…」
「もう1回?」
「違…」
 勝美の身体をうつ伏せにさせて尻を突き出させる。
「うわっ、勝美の尻、ベトベトだ…ごめん…」
 アナルからは功一の精液が溢れ出している。
「1回、休憩するか。とりあえず風呂に入ろう。で、飯食って…シーツを洗っておくかな。」
 そのあと再開…と言われるのは目に見えている。その前に買い物…と勝美は考えたのだが、腰が立た
なくなっている事に気付いて諦めた。
 今日は全部功一にやらせようと決意したのだった。


 午後2時。
「雅治、そっちはええからこっち手伝うてくれへんかな?」
 ちょっと怒りマークが額に浮いている。
 引っ越しをした。でも荷物の搬入が済んでもちっとも片づけをしない雅治に輝基は半ギレ状態。
「ダンボールはとっとと空けてしまわんといつまで経っても空かへんで積んどくだけや言うてるやない
か。ちっとは人の言うこと聞いたらどうや。」
「はいはい」
「はいは一回でええ言うてんやろ」
「婆さんみたいだな、輝基。」
 途端に顔が真っ赤になった。
 雅治が輝基を名前で呼ぶときは大体セックスの最中だからだ。
「欲情…した?」
「せぇへんっ」
「片付け、飽きた」
「ええかげんにしいやっ」



カウントダウン2につづく